HOME > 学術出版物 > zenis 日本の学問と研究 創刊号 > 材料イノベーションのための教育研究拠点 【東京工業大学グローバルCOEプログラム】

材料イノベーションのための教育研究拠点 【東京工業大学グローバルCOEプログラム】

ロゴ お問い合わせ
東京工業大学 大学院理工学研究科 大岡山事務局
〒152-8552 東京都目黒区大岡山2-12-1 S8-42
TEL: 03-5734-2436
E-mail: gcoe[アットマーク]op.titech.ac.jp
URL: http://www.matgcoe.op.titech.ac.jp/index_j.php





拠点リーダー・教授  竹添 秀男
東京工業大学 大学院理工学研究科



1. 拠点形成の目的
革新的な材料技術は、これまでも人間社会に大きな恩恵をもたらしてきました。我が国では材料プロセスに関する周辺技術とナノレベルでの材料評価技術が、バランスよく成熟しており、その結果、現在、材料科学分野において世界の学術研究をリードするに至っています。その材料科学分野において、本G-COEプログラムでは、21世紀COEプログラム「産業化を目指したナノ材料開拓と人材育成」(拠点リーダー:細野秀雄)の成果をさらに発展させることを目指しています。すなわち、近年ますます高度化するナノ材料科学のベースとなる分野横断的な基礎学力とともに、国際化がすすむ材料産業をリードするためのマーケッティングリサーチ力と優れたコミュニケーション力を兼ね備えた、世界に通じる高度な人材を育成します。外に向けては、材料分野の産業拠点として世界的に重要性を増している中国、韓国等のアジア圏諸国と協力し、また、つくば地区の研究機関と連携し、材料分野における世界トップレベルの教育研究拠点を形成し、それを積極的に世界に発信します。

図1


2. 研究活動
本拠点の研究における大きなミッションは、国際的にきわめて重要な環境・エネルギー・人口問題等解決にブレークスルーを与えるような材料イノベーションを引き起こすことです。そのために、本学の材料分野のあらゆる領域・フェーズを網羅する教員群を有する強みと今までの実績を生かし、①「情報・エレクトロニクス」分野、②「環境、エネルギー」分野、加えて③「ナノ計測・ナノ制御」分野の3分野に関する課題を中心に据え、研究を推進しています。メンバーの多くは産業界の経験や海外留学経験も豊富で広いグローバルな視野を有しており、これら多彩なメンバーを分野横断的に上記の3分野に分け、全員がそれぞれ異なる専門、経験を踏まえて協力、情報交換を行いながら研究しています。このように材料系を横断した研究チームを編成することにより、足し算ではない相乗的効果が期待できるのです。
また、研究面ではオリジナリティで世界のトップを狙うだけでなく、材料イノベーションを引き起こし世界にその研究の潮流を引き起こすような組織的な展開を行う必要があります。そこで、ナノテク材料研究から得られた成果を世界の潮流とするために、関連研究で台頭が著しい中国、韓国、シンガポール、香港をはじめとするアジア各国と親密な連携を展開し、本学を中心に欧米を越える世界材料拠点形成のためのグローバルな研究展開を図ります。

具体的には以下の各項目を中心に進めています。
アジア圏を中心にした材料系学術雑誌、NPG Asia Materialsの内容の充実
材料系学術雑誌、NPG Asia Materials(NPG)を創刊し、アジアの材料研究のアクティビティを世界に発信します。さらに、本学がアジアに位置する材料科学研究の世界的メッカとしての地位を確立するよう活動を加速させます。(NPG Asia Materials : http://www.natureasia.com/asia-materials/)
共同研究の展開
これまでに10名程度の博士課程学生、若手研究者を受入れ、大きな共同研究に発展しています。今後も博士後期課程学生を含む若手研究者を巻き込んだ共同研究を積極的に展開します。
「国際的なフォーラム」の開催
国際的なネットワークの構築と研究活動の国内外への情報発信を目的とし、本G-COE成果とそれに関連した分野横断的なトッピクスを取り上げ、全世界の一流の研究者を招待します。
留学生や短期招聘研究員等の形で学生や研究者を受け入れ
特に優れた成果を収めた者は学位取得後、国内学術研究機関への積極的な雇用・定着を図るよう努力します。
独自の研究シーズの産業化
産業化には企業との連携も不可欠です。そこで、PMコースの活動(後述)、産業界との交流等を通じこのプロジェクトから産業化につながる成果が輩出されるように一層の努力をします。

3. 人材育成
(1)求められる人材
我が国の科学技術を真にリードできる博士号を持った人材に要求されるのは、社会性・有用性・事業性などのグローバルな観点から「何を研究したらよいのか」を設定できる、研究の「マーケティングリサーチ力」のある人材です。この目標を達成するために、世界トップレベルの専門的研究に従事させるのと並行して、以下のような学習プログラムを設定します。
1. 研究成果が事業化されるまでの手法とプロセスを身につける講義と演習
2. 国際的なコミュニケーション力をつけるための小人数によるコミュニケーションスキル演習
3. 材料工学の基礎を横断的に学ぶ一連の新設講義
4. 国内外インターンシップ
5. 海外留学を履修可能科目に設定
これらにより、個々の学生の適正と将来のキャリアパスを見据え、科学コミュニティーばかりでなく社会の中のglobalな視野に立って研究の問題設定ができる人材の育成を目指します。具体的には優れた博士論文を完成することはもちろんのこと、自分の研究成果やその事業化計画を英語で議論できる能力を持つ人材の育成が目標です。

(2)博士課程カリキュラムの紹介
[ナノマテリアルイニシアティブ(NI)コース]
本学材料系の有機・高分子物質専攻、材料工学専攻、物質科学創造専攻、材料物理科学専攻の4専攻の博士課程学生を対象に、既存の学問領域や材料にとらわれることなく「材料をナノスケールにした場合に何が起こるか!」というナノ材料学に関する横断的、普遍的な理解を“物理的視点”、“化学的視点”および“分析評価の視点”から与える、新たなナノ材料教育の基本カリキュラムを構築し、それぞれの視点に関する3つの英語による授業をおこなっています。現在、このカリキュラムに沿った標準的かつ国際的教科書“Nanoscale Physics for Materials Science”を英語で出版する計画を進めています。
[プロジェクトマネージング(PM)コース]
博士課程の学生に社会的・経済的な視点からナノ材料技術の開発研究を眺められる能力を与えるべく、ベンチャーキャピタルや商社など経営のプロの学外教員による寺子屋方式の実戦的な授業カリキュラムを提供し、現存の技術を元にプロの眼鏡に適うレベルの事業提案書が作成できるまでの能力開発を目的としています。
上記コースの博士課程学生に対し、少人数クラスを複数設定し、国際的に活躍できる人材育成に欠かせないコミュニケーションスキルを自分の研究内容が専門外の方にも理解してもらえるようにコミュニケートできるレベルまで高める実戦的なカリキュラムを、日本語・英語両面に渡って施行しています。これまでに本学の博士課程の学生の海外国際学会参加、有力研究拠点への留学、海外有力拠点からの博士課程学生、若手研究者の招聘、さらに、中国清華大学の大学院学生と本学博士課程学生が3日間合同で研究成果を議論しあうTokyo-Tech Asia Materials Weekや、北京化工大学との連携交流シンポジウムなどを通して、博士学生・若手研究者の海外との交流を積極的に支援し、国際交流を推進する機会を積極的に提供しています。

(3)アジアナノテクキャンプ
本G-COEの連携先である産業技術総合研究所(AIST)、物質材料研究機構(NIMS)が中心となりアジアの材料研究における13の拠点国との合同の研究・教育プログラム「アジアナノフォーラム」の一貫として“アジアナノテクキャンプ”を開催しています。このキャンプにはパシフィックリムの12カ国からナノテク分野の博士学生・若手研究者30名を招待し、本G-CEOの博士学生とともに筑波、東京、名古屋の3会場を回り、連携先機関の若手研究者も交えたセミナー、ワークショップ、先端企業との交流、研究発表と議論を18日間に渡って行い、アジア諸国の優秀な人材との若手・学生レベルでの交流やネットワーク構築に有効な機会を与えています。

図2


4. 終わりに
世の中には、膨大な数の物質が既にあり、現在も新たな物質が創られています。このような物質が、人間社会に直接役に立つようになったとき「物質」は「材料」になります。そして、技術の大きな進展はしばしば「材料」の革新(イノベーション)から成し遂げられます。資源、環境、エネルギーという現代の技術課題に挑戦するために、我々は「ナノ構造」を共通の基盤として材料のイノベーションを目指しています。
教育面では革新的な材料を生み出す基礎となる研究能力と、自分の研究をビジネスとして昇華するための基礎知識を身につけ、将来、社会に貢献することのできる人材を育成し、研究面では、最近、急成長しているアジアの教育、研究拠点との積極的な協力を考えています。これによって、東工大を世界の材料研究のトップに押し上げ、アジアに欧米を越える教育、研究の拠点を形成することがこのプロジェクトの狙いです。
プロジェクトを推進するにあたり、意欲のある学生、若手研究者を歓迎します。詳細はホームページ(http://www.matgcoe.op.titech.ac.jp/index_j.php)をご覧ください。