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高機能化原子制御製造プロセス教育研究拠点 【大阪大学グローバルCOEプログラム】

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大阪大学 大学院工学研究科 精密科学・応用物理学専攻 グローバルCOE事務局
〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-1
TEL: 06-6879-7296
E-mail: office[アットマーク]gcoe.prec.eng.osaka-u.ac.jp
URL: http://www.acftgcoe-osaka-u.jp/





拠点リーダー・教授  山内 和人
大阪大学 大学院工学研究科



拠点紹介
「高機能化原子制御製造プロセス教育研究拠点」は2008年度グローバルCOEプログラム(機械・土木・建築・その他工学分野)に採択されました。本拠点は文部科学省COEプログラム「完全表面の創成」、21世紀COEプログラム「原子論的生産技術の創出」などを通して形成してきた拠点を基盤とし、継続・発展させるものです。
21世紀COEプログラム「原子論的生産技術の創出」では、製造技術に活用する新たな物理・化学現象を探索し応用する「科学に基づく物づくり」の卓越した研究拠点を形成し、次世代の物づくりの基盤となる数多くの先導的な製造技術を具現化してきました。
グローバルCOEプログラムでは、この理念を継承しつつ、さらに物づくりの「先導」から物づくりによる「価値創造」への発展を目指します。本拠点が目指す「価値創造」の方向、すなわち次世代の製造技術が向かうべき高機能化の方向は、広領域加工における原子レベルの制御性と環境調和性です。その実現を「価値創造」の機軸として、この「価値」を共有する国内外の研究機関や民間企業との強固な異分野連携を図ることによって、広範な科学技術が結集する教育研究環境を実現します。そして、この環境のもと、高い独創性と自立心をもち、国際感覚と異分野との融合能力を備えた、特に企業での活躍が期待される次世代製造プロセス開発を担う若手研究者を継続的に輩出することを目的としています。

GNプラットフォーム-- 本拠点の教育研究基盤 --
上記の教育研究環境を実現するため、本拠点がカバーする分野を補完する国内外の研究機関や企業との連携をもとに、基礎研究から応用、融合分野の創出に至る一連の階層をつなぐ教育研究支援基盤GN(Global Network)プラットフォームを構築します。これは、製造技術研究が中心となってこそ実現が可能な、異分野との強固な連携に基づいたプラットフォームであり、拠点が創出する製造技術の科学的・社会的価値を共有し、発展させる仕組みを備えた研究基盤です。
GNプラットフォームは、本学教員による「高機能化原子制御製造プロセス創出拠点」、国内外の連携研究機関との「グローバル連携」、共同研究企業との「産学連携」によって構成されます。

高機能化原子制御製造プロセス創出拠点
計算物理学、機能材料創製、極限精密加工、機能システム創製、機能・構造計測の5研究部門に、クリーンルームなどの研究ファシリティーの活用支援・管理を行う教育研究環境管理部門を加えた計6部門を精密科学・応用物理学専攻、超精密科学研究センターの教員によって組織し、教育研究支援室の指揮のもとに共同支援体制をとります。超精密科学研究センターは、産学連携コアとしての機能を有し、さらに複数企業との連携研究における機密保持と協働に関する仕組みを構築します。学術的共通性が高い計算物理学部門では、「国費外国人留学生(研究留学生)の優先配置を行う特別プログラム」(文部科学省)をすでに開始しており、企業研究者の国際性向上に向けた人材育成を行います。

グローバル連携
SPring-8、APS、ESRF、J-PARC、ONL、Selete(Semiconductor Leading Edge Technologies)などが参画します。量子ビーム光学デバイス、電子デバイス等の発想・設計から製造・応用展開に至る連携関係を強固に結んでおり、チームへの共同研究者の派遣に加えて、テーマ毎に教育研究評価支援メンバーとして第一線の研究者が加わります。プログラムの進行に伴い、新規機関の参加など、フレキシブルに関係を発展させます。

産学連携
共同研究講座を始めとして、その他多数の共同研究企業が参画し、テーマ毎に教育研究評価支援メンバーとして、各機関から第一線の研究者が加わります。

図1


拠点の研究テーマ
本拠点では、物づくりの基本である機械加工学や特殊加工学に深く根ざしながら、製造技術の3本柱である材料学、加工学、計測学の幅広い学問領域を以下のようにカバーしています。
* 計算物理学(量子力学に基づくプロセス開発、デバイスシミュレーション)
* 設計学
* 機能材料創製学(薄膜形成、自己組織化)
* 精密加工学(原子単位の表面創成)
* 物理計測学
* 光計測学(空間スケール10–10~100mをカバーした広帯域形状計測)
* 機器制御工学

また本拠点でしか作り得ない「物」や製造技術の具現化を通して、連携する異分野との融合学問領域をセカンドメジャーとしてカバーしています。具体的には、放射光科学、コヒーレントX線光学、中性子光学、大気圧プラズマ工学、太陽電池・先端電子デバイス工学、細胞工学などです。

図2


具体的な研究目標
原子サイズの精度を有する加工プロセスの創出と量子ビームオプティクス開発
国家基幹技術であるX線自由電子レーザーや中性子ビーム施設では、世界初の知見を得るため、キーとなる光学デバイスの開発が強く望まれています。これらを実現するための製造プロセスの開発と具体的なイメージングデバイスや集光デバイスの創出を行います。また、ここで目指す超精密加工技術は、次世代の極端紫外線リソグラフィー用光学素子やマスク基板、様々な電子材料基板など、民生品の製造分野への応用においても強く望まれており、このための産学連携研究を強力に推進します。

環境調和製造技術創出と実プロセスの開発
サステナビリティを担保する未来志向型製造技術の創出を目指し、本拠点では、地球を汚さない:Chemical Safety、省資源・省エネルギー: Energy Saving、自然に学ぶ物づくり(自己組織化): Self -assemblyの3Sを基本コンセプトとして、日本が世界を先導するにふさわしい環境調和型の製造技術開発を推進します。具体的には、次世代電子材料基板、FPD(Flat Panel Display)、太陽電池、次世代電子デバイス等の製造技術を対象に、主に国内外の企業と連携して研究を推進します。

加工原理の探索と解明
計算科学によるプロセス原理の探索と解明、より大規模なプロセスへの適用を実現するためのツール開発、およびアプリケーションモデルの高度化を推進します。


研究領域
◆ サブナノメータ数値制御加工
EEMは、全く新しい加工メカニズムにもとづく超精密加工法です。加工物表面との反応性を持った微細粉末粒子を超純水の流れにのせて加工物表面に供給し、微細粉末粒子表面の原子と加工物表面の原子との間で起こる化学反応の結果、加工物表面の原子が微細粉末粒子によって持ち去られることによって加工が進みます。加工物表面の原子の配列を全く乱すことなく、原子の大きさの凹凸しかない平らな表面を作ることができます。

◆ ラージスケールナノメータ加工
プラズマCVMは、プラズマ中の中性ラジカルと加工物表面の化学反応を利用した超精密加工法です。1気圧という他に類を見ない高圧力雰囲気下において高密度のプラズマを発生させ、プラズマ中で生成した中性ラジカルを加工物表面の原子に作用させて揮発性の物質に変えることで加工が進みます。この加工法は加工面の原子配列を全く乱さないだけでなく、従来の機械加工に匹敵する加工能率と形状創製能力を併せ持っているため、機械加工に置き換わる革新的な加工法として注目されています。
開発した数値制御プラズマCVM加工装置を用いて、表面の凹凸を1メートル四方でわずか1ナノメートルに抑えこむ形状修正加工に成功しています。これは、本州全体を1mm以内の高さにならしたのと同じになります。
現在、産官学一体となった研究協力体制のもとに、シンクロトロン放射光用ミラー、次世代半導体基板等、極限的な精度が要求される“物づくり”に精力的に取り組んでいます。

◆ 大気圧プラズマを用いた材料創製・加工プロセスの開発
大気圧プラズマCVD法は、大気圧という高圧力下でのプラズマにより生成される高密度なラジカルを利用した超高速成膜技術です。従来の成膜法に比べて、100倍以上高速に高性能な機能材料薄膜を形成することができ、最先端科学技術分野の要請に応えうる新技術として注目されています。
大気圧プラズマCVDを用いれば、基板の材質や大きさに関係なく高速成膜することができます。例えば、プラスティックフィルムなどの上にアモルファスシリコン薄膜を形成すると、フレキシブルで軽量な太陽電池を作製することができます。
現在、産学一体となった共同研究体制のもとに、大気圧プラズマCVDを最先端科学技術分野の“物づくり”に不可欠なキーテクノロジーにするべく、精力的に研究開発を進めています。

◆ 超高品位量子ビームによる創薬、生命機能の解明
レントゲンで用いられるX線は、医学に革命を起こし、DNAの二重らせん構造を明らかにするなど、人類の発展に大きく貢献してきました。
本領域では、高い性能のX線が実現されているSPring-8において、ミラーを用いたX線顕微鏡の開発に取り組んでいます。X線ナノビームは、物質や細胞内の元素などのナノメートルオーダの空間分布情報を得るのに不可欠です。ミラーを用いたX線集光技術は、波長依存性がなく、高集光効率なので、理想的な集光法と考えられています。
SPring-8において、作製したミラーにより、世界最小の30nmサイズのX線ナノビームを実現しました。開発した高分解能X線顕微鏡はバイオロジー分野への応用を目指しています。

◆ ナノスケール計測・構築技術の開発
ナノの世界を測る単位である1nm(10–9m)はおよそ原子5個を並べた長さであり、1ns(10–9s)は光がわずか0.3m進む時間です。ナノメートルの世界を光で観ることは、光学レンズの回折限界を越えるために不可能と思われてきましたが、走査型近接場光学顕微鏡の開発によってこの常識が破られました。また、ナノ秒の世界を光で観ることも高速度カメラの急速な進歩により可能になりました。
本領域では、ナノメートルの分解能を持つ近接場光学顕微鏡や、大面積の半導体基板上でナノメートルの欠陥を見つけ出せる光散乱法を開発し、次世代の超LSI、高密度メモリー、オプトエレクトロニクス素子など最先端の“物づくり”科学技術へ広く応用しようと試みています。さらに、ナノ秒のレーザーで物質の極限状態を探る新たな計測法の開発にもチャレンジしています。このように、物理学を基礎に、常に計測の極限に挑戦して、新しいテクノロジーの創造への道を拓く研究に意欲的に取り組んでいます。

◆ 原子制御プロセスに基づく次世代エレクトロニクスの創成
最先端の大規模集積回路(超LSI)、高精細ディスプレイ、DVDやメモリーカードをはじめとする高密度記録メディアなどさまざまな分野において、固体表面や薄膜を原子レベルで制御して創成する技術が必要となっています。私たちは、半導体を中心とした先端材料について、新しい原理に基づく薄膜形成プロセスおよびナノ構造創成プロセスを開拓して物づくり技術への応用展開を図り、人類の科学・技術の発展に貢献することを目標としています。具体的な研究テーマとしては、超LSIを構成する絶縁膜と半導体との界面構造の原子レベルでの評価や界面形成機構の解明、新しい絶縁膜や電極材料の探索、大気圧プラズマを用いた単結晶シリコン薄膜の低温・高速成長や、基板表面の反応制御による高性能ポリシリコン形成法の開発が挙げられます。これらの研究テーマはいずれも半導体結晶工学、表面・薄膜科学の分野における現代の最先端の研究テーマであり、豊かな未来を切り拓くための基盤的な学問として位置づけられています。


産学連携
環境調和型製造技術の開発は、国内外の企業との連携が中心となります。本拠点では、莫大なエネルギーを消費する精製工程を必要としない金属級Siからの太陽電池薄膜の直接形成や、チャンバーレスプラズマプロセス、触媒反応を利用したSiCやGaNの液相エッチング、自己組織化による表面機能化など、多くの新しいシーズが創出されています。グローバルCOEプログラムでは、GNプラットフォームでの連携を強化し、広範な価値分析を行いながら、太陽電池、FPD、電子デバイス、フィルムエレクトロニクス、マスク基板、次世代半導体ウエハ等のための新世代製造プロセスの開発を目指します。また、拠点リーダーが委員長を務める超精密加工専門委員会(精密工学会)をベースとして、若手を中心とするコミュニティー形成を支援し、これによって開発・評価・実用化・異分野展開の各階層との結びつきを強め、成果還元のチャンネルを広範化し、本拠点の教育研究機能の継続的な向上を図ります。
共同研究講座では、企業からの指導者(招聘教授、招聘准教授)を迎えながら、本拠点との間で共同開発が進んでおり、今後さらに多くの企業の参加を予定しています。