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ES細胞とiPS細胞を用いた神経難病治療法開発 【京都大学 高橋淳】

高橋 淳 准教授 高橋  淳 准教授
京都大学 再生医科学研究所 再生医学応用研究部門 生体修復応用分野

〒606-8507 京都府京都市左京区聖護院川原町53
http://www.frontier.kyoto-u.ac.jp/ca01/





京都大学再生医科学研究所生体修復応用分野では、幹細胞とくに胚性幹細胞(ES細胞)と人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いた神経難病治療法開発を目指しています。なかでも、胎児黒質細胞移植によって臨床経験が蓄積されているパーキンソン病を主な対象疾患として、ES細胞、iPS細胞からのドーパミン産生ニューロンの誘導、細胞移植によるモデル動物の神経症状改善に関する研究を行っています。これら多能性幹細胞を用いた細胞移植療法の臨床応用にむけて、①動物因子を含まない神経誘導、②腫瘍形成抑制のための細胞選別、③移植時における細胞死抑制や移植後の免疫抑制、④長期効果と安全性確認など検討すべき点が多々あり、現在はこれらをひとつひとつ解決しています。将来的には、細胞移植や脳深部刺激療法などを含めた総合的な神経難病治療に繋げたいと考えています。また、これらの成果は他の神経変性疾患や脳梗塞などにも応用可能であると期待されます。

最近の成果として、霊長類モデルにおいてもES細胞からのドーパミン産生神経誘導、その移植による神経機能改善が可能であることを明らかにしました(Takagi et al, 2005)。また、マウスを用いて神経誘導、細胞移植条件の至適化を検討し、前駆細胞の状態で移植したほうが脳内での生着・分化が良いこと(Morizane et al, 2002&2006)、分化誘導後に神経系細胞のみを選別して移植することによって腫瘍形成が抑えられること(Fukuda et al, 2006)、移植時の細胞分散による細胞死に対してRho-ROCK経路の阻害剤が細胞死抑制効果を発揮すること(Koyanagi et al, 2008)を明らかにしました。胎児髄膜にもES細胞からのドーパミン産生神経誘導能があることを見いだし、PA6細胞との共通因子としてWnt5aが重要であることを明らかにしました。この方法を用いてヒトES細胞からのドーパミン産生神経誘導にも成功しています(Hayashi et al, 2008)。