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燃料電池に関する研究・CO<sub>2</sub>地中貯留の研究 【東京工業大学 平井秀一郎/津島将司】

津島 将司 准教授 平井 秀一郎 教授 平井 秀一郎 教授 / 津島 将司 准教授
東京工業大学 炭素循環エネルギー研究センター 平井・津島研究室

〒152-8552 東京都目黒区大岡山 2-12-1
http://www.mep.titech.ac.jp/~TANSO/hirai_index-j.html





東京工業大学炭素循環エネルギー研究センターは、大気中へのCO2削減の基盤研究を推進することを目的として設立されました。特に、化石燃料の使用を前提としながらも、大量のCO2排出に対して実現可能なCO2削減技術開発を目的として、京都議定書のわが国のCO2削減目標の達成に技術的に寄与すると共に、「化石燃料の高度有効利用技術」、「ソーラーハイブリッド燃料生産技術」、「燃料電池による高効率発電技術」を「地中・海洋貯留等のCO2回収・固定化技術」と統合化し、「炭素系燃料を使用しつつ大気中のCO2濃度の増大を抑制できる地球規模での炭素循環システム」(「エネルギー調和型二酸化炭素削減技術」)を社会システムとして構築するためのハード面からの研究を推進しています。ここでは、化石燃料を一次エネルギーの出発点としながらも、火力発電所などの大型定置型エネルギーシステムから排出されるCO2は回収・貯留します。一方、自動車などの小型分散型エネルギーシステムにおいては、個別のCO2回収が困難であることから、化石燃料を水素へ転換し、水素転換の際に発生するCO2を回収・貯留することで、大気中へのCO2排出の大幅な削減を目指しています。このようなエネルギーシステムの実現のために、我々の研究室では、分散型エネルギーシステムにおける水素利用技術としての燃料電池に関する研究、ならびにCO2地中貯留の研究を行っています(図1)。

図1
図1 エネルギー調和型二酸化炭素削減技術のコンセプト
化石燃料を一次エネルギーの出発点としながらも、大気中へのCO2排出を大幅に削減できる。


これらは一見すると大きく異なる研究対象のようですが、いずれも、熱および物質の輸送、相変化、化学反応などを伴っており、かつ、多孔質のような複雑な流路内における現象を対象とする点で多くの共通点があります。このような背景から我々の研究室では、実験と数値解析に基づく現象の解明に加えて、新たな計測技術の開発も行っています。たとえば、固体高分子形燃料電池においては、電解質として使用される固体高分子陽イオン交換膜の含水状態が電池性能に大きく影響を及ぼします。しかしながら、高分子膜は非常に薄いだけでなく、電池内部に位置しているため直接的な可視化(当時、高分子膜内の水分は厚さ方向にも、面方向にも空間的な不均一が生じると考えられていました)が困難です。これを解決するために、医療用などで広く用いられる磁気共鳴イメージング(MRI)という計測技術に着目し、燃料電池内部の固体高分子膜中の水分布の計測に世界ではじめて成功しました(図2)。これにより、燃料電池の発電にともなって、膜内に水分の濃度勾配が形成されることを示し、電解質膜内部における電気浸透と濃度拡散の影響を明らかにしました。MRI計測技術は、CO2地下貯留の研究においてもその有用性が実証されています。我々は、地下環境を模擬した多孔質内でのCO2と水の挙動について、MRIを用いることで、はじめて観察に成功しています。その結果、水分を含んだ多孔質にCO2を注入する場合、一部の多孔質空隙には水が残留することが示されました。このような知見は、地下環境でのCO2貯留可能量と深く関係するため、CO2の長期安定貯留の実現に向けて基礎的な実験データを低給するものです(図3)。平成20年6月には、文部科学省グローバルCOEプログラムに、平井秀一郎教授を拠点リーダーとした「エネルギー学理の多元的学術融合」が採択され、これまでの研究の一層の推進とともに、将来の人材育成のための教育についても、国内外から期待されています。

図2
図2 固体高分子電解質膜内の水分濃度のMRI計測結果
薄い電解質膜の厚み方向の水分布を示しており、それぞれの画像中、右側が水素側、左側が酸素側である。燃料電池の発電量の増加とともに、水素側の水分濃度が低下していることが明らかになった。


図3
図3 CO2地下貯留を模擬した多孔質内の注入CO2の分布をMRIにより可視化した結果
注入前(左)には一様に水分が存在している。注入後(右)も、一部の水分が多孔質内に残留していることがわかる。