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高性能なバイオポリエステルを合成する微生物の開発 【東京工業大学 柘植丈治】

柘植 丈治 准教授 柘植 丈治 准教授
東京工業大学 大学院総合理工学研究科 物質科学創造専攻

〒226-8502 横浜市緑区長津田町4259 J2-47
http://www.iem.titech.ac.jp/tsuge/





近年、地球温暖化、酸性雨、海洋汚染、生態系の破壊など、深刻な地球環境問題が提起され、地球環境と調和する人間社会の形成が全世界的な課題となっています。当研究室では、持続可能な社会を実現するための科学技術の一つとして、再生可能な植物資源(糖、植物油)や二酸化炭素から生分解性を有するバイオポリエステルを微生物合成し、それらを高性能材料にするための基礎研究を進めています。とくに、バイオテクノロジーを駆使して、バイオポリエステルの生合成、関連酵素遺伝子の取得と解析、高生産微生物の分子育種、そして、生体高分子の構造解析と機能開発、生分解性高分子の材料設計に関して、高分子科学と生物科学の両面から研究を進めています。

図1


数多くの微生物は、エネルギー貯蔵物質としてヒドロキシアルカン酸のポリエステルを生合成し、体内に顆粒状に蓄えています。これらバイオポリエステルは、自然環境中の微生物によって完全に分解され、最終的に無機化される生分解性プラスチックです。この環境に調和する生分解性のバイオポリエステルを、再生可能な炭素源から効率よく大量に微生物生産するシステムの開発が大きな目標です。これまでに、高性能バイオポリエステルを生産する微生物からポリエステル生合成遺伝子を取得し、その機能の解析をするとともに、安価な植物油から共重合ポリエステルを大量に生産する遺伝子組換え微生物の分子育種に成功しました。現在では、遺伝子工学、代謝工学、タンパク質工学、進化分子工学の各基礎技術を応用し、ポリエステル生産のための微生物代謝を最適化することに取り組んでいます。

最近我々は、炭素鎖数4の(R)-3-ヒドロキシ酪酸(3HB)と炭素鎖数6~12の(R)-3-ヒドロキシアルカン酸(3HA)からなる共重合体P(3HB-co-3HA)を合成する遺伝子組換え微生物を用いて、同一の大豆油を原料に用いても、共重合体の3HAモル組成を9~32 モル%の任意の値で合成する手法を開発しました(Tsuge et al, Macromol Biosci, 2009)。これは、ポリエステルを重合する酵素にアミノ酸置換を導入し、基質認識を変化させることで可能になりました。P(3HB-co-3HA)は、モノマー組成比に応じて繊維やフィルムに加工することができる高性能バイオポリエステルです。このようなバイオマスを原料として作られるプラスチック製品は、近い将来、全プラスチック生産量の20%を占めると予想されています。

図2


バイオポリエステルを約80wt%蓄積した遺伝子組換え微生物。
白い顆粒状に見える部分がポリエステル。


図3