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複雑化・高度化する次世代医療を担うリーダーを育成 【東京大学グローバルCOEプログラム】

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東京大学 大学院医学系・工学系・薬学系研究科
「学融合に基づく医療システムイノベーション」事務局

〒113-8656 東京都文京区本郷7-3-1
東京大学大学院工学系研究科3号館251A号室
TEL: 03-5841-8446
E-mail: cmsi_info[アットマーク]cmsi.t.u-tokyo.ac.jp
URL: http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/CMSI/




拠点リーダー・教授 片岡 一則
東京大学 大学院医学系・工学系・薬学系研究科


CMSIの概要

CMSIとは
東京大学グローバルCOEプログラム「学融合に基づく医療システムイノベーション(CMSI:Center for Medical System Innovation)」は、医療分野におけるイノベーションをグローバルな視点で牽引しうるリーダー人材の育成を目的とした新しい教育プログラムです。
医工薬融合領域における最先端の成果に関する講義だけでなく、成果の社会還元に関する講義、分野横断的な実習、企業や海外大学での長期間のインターンシッププログラム、ケーススタディーなどの実践的なカリキュラムを介し、各個人レベルでの知と経験の統合を目指します。

ロゴ
【図1】 本プログラムのロゴマーク



CMSIのミッション
模式図
【図2】 拠点概要の模式図
超高齢・成熟社会に向かって世界の先頭を走る日本において、特に医療関連分野は科学技術立国の中核産業としての期待が高く、世界リーダーとしての地位確立が国の最優先課題に位置づけられています。本拠点は先端医療システム実現のための複合的分野を科学として統合することにより、ナノメディシンに代表される先端科学技術を理解・推進できる力量とともに、社会・経済・経営にも広い視野を持ち、明日の先端医療システムに向けて国際社会を先導することのできるΠ(パイ)型人材を育成することを目的とします(図2)。育成された人材には科学技術イノベーションのより一層の推進と、その成果の社会還元を通じた社会経済イノベーションの牽引により、先端科学技術が新たに実用化、産業化される道を切り開くことが期待されます。

CMSIの組織
本拠点は医学系、工学系、薬学系、そして社会還元系の4領域からなり、各領域が有機的に連携することで、融合領域における研究を推進し、研究成果の社会還元を実現できる人材を育成します。
各領域のリーダー
拠点リーダー:  片岡一則(工学系研究科マテリアル工学専攻・教授)
医学系リーダー: 中村耕三(医学系研究科外科学専攻・教授)
工学系リーダー: 長棟輝行(工学系研究科バイオエンジニアリング専攻・教授)
薬学系リーダー: 入村達郎(薬学系研究科統合薬学専攻・教授)
社会還元系リーダー: 木村廣道(薬学系研究科生命薬学専攻・教授)




CMSIの人材育成

人材育成
【図3】 人材育成
期待される育成人材像
本拠点は医工薬が緊密に連携する世界最先端の研究開発および先端医療の現場に確固たる軸足を置きながら、象牙の塔に籠もって独善的になることなく、現実の社会での経験と多様な産業・事業化の生の姿に触れる機会を提供することで、バランスのとれた人材育成を行います。本拠点の教育課程を修了した人材には、広い視野と融合的価値観を持ったリーダーとして、科学界、産業界をはじめとした様々な領域で活躍することが期待されます(図3)。

CMSIのカリキュラム

学融合のための教育スケジュール
医工薬の融合領域に関する最先端の講義や実習、研究成果の社会還元に関する講義、海外研究機関でのサマーインターンシップ、医工薬融合領域での事業化事例のケーススタディーなどの特徴的な教育カリキュラムを段階的に受講することができます(図4)。

CMSI独自の選択必修講義
異分野学生のための医工薬入門講義
医工薬融合領域における学内外の研究者による講演とその後の討議により、最新の研究成果に対する理解を深める、CMSI独自に編成される講義です。
マネジメントリーダーシップ講義
医療関連産業において、研究成果の迅速な事業化を展望できるリーダー人材となるためのスキルセット、マインドセットの構築を目指します。外国人教員による英語での講義が中心となります。
ソーシャルレスポンシビリティー講義
研究成果の円滑な社会還元に必要不可欠となる、新規物質の安全性や倫理、環境への影響、規制等について、その最新の状況を理解するための講義です。

クロスオーバー実習
専門領域に止まらない幅広い融合領域での実習を行い、その上で企業や医療現場のニーズを包括的に理解することにより、社会的需要を見据えた研究開発を行うことを目指します(図5)。

グローバル化カリキュラム
実践英語演習、国際セミナー・シンポジウム、国際学会での発表を通して、国際的なコミュニケーションスキルを磨きます(図6)。また、選抜された学生を対象にサマーインターンシップを実施し、2~3ヶ月に渡って海外協力機関・海外企業の一員としてのインターンシップ活動を行います。海外協力機関からの留学生も積極的に受け入れます。

ケーススタディー
学内外の研究者による、医工薬融合領域での事業化事例をケーススタディーとして学びます。また、CMSIカリキュラムで培われた経験と知識を総動員し、自身の研究成果の事業化プランを作成し、実践力を養います(図7)。

全体合宿(リトリート)
関係学生、教員が一堂に会し、合宿形式で学生による研究発表やケーススタディーの成果報告に関する討議を行い、拠点内での連携を深めます。



カリキュラム
【図4】 カリキュラム



クロスオーバー実習
【図5】 クロスオーバー実習



グローバル化カリキュラム
【図6】 グローバル化カリキュラム



ケーススタディー
【図7】 ケーススタディー






CMSI拠点リーダーインタビュー

片岡教授

東京大学大学院 工学系研究科マテリアル工学専攻
医学系研究科附属疾患生命工学センター
教授 片岡 一則(拠点リーダー)


- 医療システムイノベーションについて -
-- プログラム名にもある「医療システムイノベーション」とはどういうことでしょうか?
まず医療をシステムとして捉えているところに特徴があります。そして、イノベーションはそれを革新するということ、つまり医療システムを変革していく、という我々の決意を示しています。
ここでいうイノベーションには大きく2つあります。一つは「技術的イノベーション」です。イノベーションの素地には起こる現象を分子レベルで突き止めるという大元のところがあり、だからこそ非常に小さいレベルで物事を築きあげることができます。それはスケール的にいうとナノの世界であり、そこでは今、物理、化学、生物学が融合し、ナノサイエンス、ナノテクノロジーと呼ばれる学問が生み出されています。そうしたナノスケールのサイエンスに裏打ちされたナノメディスンが新しい医学をドライブすることは間違いありません。
もう一つは「社会的イノベーション」です。今日本で問題になっているのは、良い研究が社会に還元されないということです。それを解決するには、自分の研究成果を世の中に持っていくための技術・考え方を、研究者が自分で身につける必要があります。CMSIでは社会還元学という部門を設け、サイエンティスト、エンジニア、医師の側から医療の社会的イノベーションのイニシアティブを執るための教育を行っています。

- 医工薬の学融合について -
-- 本拠点ではどのような形で医工薬の融合を進めていきたいとお考えでしょうか?
医学、工学、薬学の学生が同じ目的、場を共有して、異なる視点から関係を持つことが必要です。他学部の学生に研究内容を話した時に、全く違った発想に基づいた質問が出てくる。それにより思いも寄らないアイデアが生まれてくる。そういった関係が研究にも良いフィードバックを与えると思っています。また、異分野に人脈が形成されることも非常に大きいと思います。大学院の時期に培われた人脈はアイデンティティーが形成される段階にあるため、しがらみなどは関係ありません。そういう人間関係からは、十年先、二十年先に自分が何か挑戦しなければいけない時に気軽に話をし、閃きを生むアドバイスを得ることができます。

- 教育拠点としてのCMSIについて -
-- CMSIの教育カリキュラムは、どのような人材を育成するのでしょうか?
これまでの大学教育は純粋培養になっており、異質なものとの接点や融合する機会をすべて企業に任せてきました。企業の人がよく「日本の大学のドクターは使い物にならない」とおっしゃられるのはそのためです。そのため、教育面では企業との接点や医工薬同士、異分野との接点を持つ機会を提供したいと考えています。そういう人であれば、企業・大学・行政官のいずれになっても必ず広い視点で物事を見ることができます。逆に、広い視点を持たずに大学に残ったり、行政官になったりすると、そういう人たちが拡大再生産され、問題が生じます。大事なところはその人のサイエンスの質はそのままに、社会への適合性を持った人が教育されるカリキュラムになっていることです。

- CMSIに参加する学生に -
-- 最後にCMSIに参加する大学院生へのメッセージをお願いします。
私の恩師である鶴田先生がよくおっしゃっていたのですが、Educationは日本語では「教育」という意味があるが、ラテン語では「引き出す」という意味になります。CMSIはポテンシャルを引き出す「きっかけ」を提供する場でありたいと考えています。学生の皆さんには、殻を作らず、引き出されることを待っているポテンシャルにネットを掛けずにいて欲しいと思います。そして自分の道を主体的に責任を持って選び、CMSIで自分は何ができるかという視点で参加していただくことを期待します。


工学系リーダーインタビュー

長棟教授

東京大学大学院 工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻
教授 長棟 輝行(工学系リーダー)


- 医工薬の学融合について -
-- 本拠点がテーマに掲げる学融合について、本拠点独自の特徴をお聞かせ下さい。
異分野とのコラボレーションでは、第一歩から言葉やテクニカルタームが壁となりますが、こうした初歩的な障壁を取り除くために、本拠点では異分野学生のための入門講義があります。また実践的な教育として、異なる研究室で実習を行い、どういうシーズやニーズがあるかを理解した後、ケーススタディーへと進みます。こうした取り組みにより、より活発で具体性のあるコラボレーションが進むと期待しています。
-- 本拠点の中で工学系分野はどのような役割を担うのでしょうか?
対象をシステム的に捉えることが、工学系の得意とするところだと思います。例えば、物が部品という要素から出来ていると考えると、要素の集合の規模によって階層性が現れ、各階層が組み合わさってシステムが出来上がります。このように全体をシステムとして俯瞰すると、どこを最適にしなければならないのか、どこを設計すれば全体がシステムとしてうまく作動するかを判断出来ます。この考え方を医学や薬学の分野に拡げていきたいと思います。

- 育成すべき人材 -
-- 長棟先生は本拠点を通じてどのような人材育成を推進していかれますか?
これまでの博士研究者については、狭い専門性による蛸壺的な部分がよく指摘されてきましたし、柔軟性に欠けるとして企業から採用してもらえない理由にもなっていました。しかし世界に目を向けると、例えばヨーロッパでは広い視野を持てるようなシステムがあり、特に学部から大学院へ進学する際などは、専門分野を大きく変えることを大学側がエンカレッジしているような感じがあります。従ってこれからの研究者像として、本拠点では通常求められる「専門性とそれを応用する広い視野(T型人間)」に加えて、「社会に対する目」を持って研究と共にマネージメントもできるような人(Π型人間)を育てたいと考えています。
-- 本拠点では社会・経済・経営の講義が取り入れられていますが、将来的には工学系の研究者やアカデミックに残る研究者にもこのような知識が必要となってくるのでしょうか?
企業に勤める人についてはもちろん、アカデミックの研究者でもいずれは研究マネージメントが必要になってくるでしょうし、国際的に連携する機会が増えればこのような知識がますます必要になるでしょう。また、ベンチャーを設立・運営できる社会システムを日本で整備するために、そしてベンチャーそのものを立ち上げるためにも必要となるでしょう。学生には社会還元を目指した学融合にも興味を持ち、将来的には博士論文のテーマとしてそれを目指すような、高い意識を持つ学生に参加してもらいたいですね。

- CMSIに参加する学生に -
-- 本拠点の学生にメッセージをお願いします。
学生の皆さん自身がプログラムを面白いとか自分のスキルアップに繋がると思って、自ら積極的にやろうとする気持ちを持つことが本拠点を成功させる鍵だと思います。「こういう先輩の話を聞いてみたい」などの要望を出すなど、主体的に取り組んで欲しいと思います。ジョイントシンポジウムや海外との連携プログラムなども学生が主体的に進めていって欲しいと考えていますし、RA学生がHPの作成に参加したり、研究を紹介するRAニュースを編集したりすることも考えています。その中で交流が深まり、リーダーシップも培われていくのではないでしょうか。こうした自ら学び自ら作るというマインド、さらに国際的な広い視野を持つということをこのプログラムで身につけて欲しいと思います。



CMSIの活動の一例

CMSI社会還元系:学生交流プログラム
CMSIでは、最先端科学技術のイノベーションを推進すると同時に、社会・経済的側面においてもイノベーションを推進することのできる人材の育成を目指しています。そのため本プログラムの特色として、医学系、工学系、薬学系の各領域に加え、社会還元学系を新設し、科学技術の事業化に向けたスキルセット、マインドセットの構築や、技術革新が社会に及ぼす影響などについても学ぶことができます。その社会還元学系の取り組みとして、特に異なる専門性を持った海外大学の学生と国際的な交流を持ち、コミュニケーション能力を高める目的で「学生交流会」を企画しています。
その初めての取り組みとして、2008年12月にスタンフォード大学のビジネススクール(GSB: Graduate School of Business)との学生交流会を開催しました。

活動報告
写真 第一回 「スタンフォードビジネススクール 東京大学学生交流会」 開催報告
報告者: スタンフォードGSB交流会オーガナイザー
日時: 2008年12月17日(水)
会場: 医学部図書館大会議室

プログラム
09:00-10:00 本郷キャンパスツアー GSB学生
10:00-11:30 (第Ⅰ部)講演
    東京大学 小宮山宏総長
    経済産業省大臣官房審議官 石黒憲彦氏
11:30-12:30 (第Ⅱ部)学生グループ討論会



「学融合に基づく医療システムイノベーション」に所属する学生とスタンフォード大学ビジネススクール(GSB: Graduate School of Business) との学生交流会が、80名を越える参加者を集め開催されました。当交流会は、社会還元系リーダーの木村廣道特任教授(薬学系研究科)が主催し、東京大学からは30名のGCOE博士学生が参加しました。GSBからは、学生28名と代表教授1名が参加し、日本発のイノベーション「J-Innovation」をテーマとした学生討論会という位置付けで行いました。
第一部において、小宮山宏総長が 「Year 2050 : benchmark of civilization」、石黒憲彦氏が「Policy for Enhancement of Open Innovation in Japan」というタイトルでそれぞれ講演され、東京大学におけるリーダーシップ教育の在り方や、日本発のイノベーション振興の施策について活発な質疑応答が行われました。第二部には各テーブルにGCOEの特任教員が配置され、10人1組になって第一部の講演内容についてグループ討論を行いました。
さらに交流会で得られたネットワークを基に、学生同士はその後六本木に場所を移し、同年代でありつつ視点の違う海外学生と学生生活や将来の夢をお互いに語り合い、大きな刺激を受けることができました。
GSB海外研修プログラムの中でも、東京大学訪問は今回が初めてであり、当学生交流会が成功したことは、両大学の今後の交流にも大きな意味があったと考えています。

スタンフォードGSB交流会オーガナイザー
上野 傑(薬学系研究科統合薬学専攻 博士課程2年)
安西智宏(CMSI社会還元系 特任講師)