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物質階層を紡ぐ科学フロンティアの新展開 【東北大学グローバルCOEプログラム】

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東北大学 大学院理学研究科
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拠点リーダー・教授  井上 邦雄
東北大学 大学院理学研究科



サイエンスウェブの構築
私たちの自然に対する理解は、新しい技術・手法によって急速に進展してきましたが、それとともに、自然科学における研究分野は分化・先鋭化し、宇宙開闢以来形成された物質の階層に着目すると、素粒子、原子核、凝縮系物質、天体・宇宙といった物質階層が形成され、今日まではそれら各階層での特徴的な現象が物理科学の主たる研究対象となっていました。先鋭化によって各階層の研究が深みを増した反面、宇宙物質像の統一的な理解や、研究で得られた知見を広く社会に理解できる形で還元することが困難になってきました。実験的研究にあっては、さらなる深化を目指すには目標を単機能に絞り大規模化しなければ国際的な競争での優位性維持が困難な分野もあります。このようなアプローチは着実な進展を見込みやすいものですが、一次元的な研究の深化は、未発見の獲物が沢山飛び交っている広大な自然科学の世界で、槍をもって狩りをしているようなイメージでしょう。蜘蛛の巣のような大きな網を張れば一網打尽にできるかもしれません。ここで獲物に例えたものは、自然科学の研究分野のことです。そして蜘蛛の巣は、新たな研究分野を一網打尽にしようとするサイエンスウェブで、蜘蛛の糸それぞれが科学フロンティアをなしているのです。

サイエンスウェブの概念図

   サイエンスウェブの概念図


サイエンスウェブの構築はどうすれば実現するのでしょう。この拠点は物理・天文の各分野で、世界最先端を突き進む研究、それを支える実験装置・技術、そしてその研究を実現し世界的に活躍している研究者を有しています。これらの研究や研究者が連携すれば未踏の研究が始まります。極小を対象とする素粒子研究と極大を対象とする宇宙研究が繋がり、新たな研究分野が生まれ、個々の研究も大きく前進したことはよく知られています。この拠点では、多対多で蜘蛛の巣のように連携を張り巡らせることで、サイエンスウェブが構築できると考えています。各階層での研究やそこでの異なる手法を連携させ蜘蛛の糸を張るには共通の言語が必要であり、数学がその役割を果たします。これまでも物理的な現象から数学の新しい分野が生じ、そこでの数学の発展が翻って物理の現象解明に繋がるという事例は多くありました。物理との連携や応用に強い関心を持つ数学者が参画している本拠点では、効果的に連携の糸を張り、効率よくサイエンスウェブを紡ぐことができると考えています。そしてサイエンスウェブ上で多くの新たなる研究分野を開拓し、世界に発信していきます。

本拠点が推進する基盤研究例

   本拠点が推進する基盤研究例


このサイエンスウェブを使って宇宙物質像を統一的に理解するためには、自然科学全体を見渡せる自然観が必要です。自然科学が挑戦する「我々は如何にして宇宙に存在し得たのか」という問いは、哲学なら「我々は何のために宇宙に存在しているのか」となるのかもしれません。物事を達観する姿勢は新しい科学フロンティアの創出に必須であり、哲学との連携はサイエンスウェブを活性化する触媒になると期待しています。また種々の研究から生じた最新の知見や科学技術を社会に還元するには、科学倫理を身につけた上で適切な言葉でわかりやすく社会に伝える必要があります。この拠点では科学哲学・倫理学を採り入れ、社会との繋がりを重視した応用研究や啓蒙にも注力していきます。



グローバルエデュケーションハブの構築
最後に、本拠点が推進する最先端研究や分野間連携による新分野開拓は、そこで育つ学生にとって、国際的に活躍できる人材に成長するために必要な最高の経験をできる環境でもあります。また、国内では理科離れや数学能力低下のなか、基礎科学の進展と社会との乖離が顕在化しつつあり、この状況を打破するには、社会との関係を意識した研究展開とともに、研究成果を社会に伝えオピニオンリーダーとして活躍する人材の育成が不可欠です。文理協働に挑戦する本拠点は、これらの要請にも対応できる環境を用意しています。本拠点は、文理の垣根を越え、世界の協働研究拠点・協定校と連携した双方向の人材・教育・研究の交流拠点グローバルエデュケーションハブを形成し、サイエンスウェブによって開拓したフロンティア研究を世界に発信するとともに、新たな学術文化の創出を担い、社会のイノベーションに寄与する人材の輩出を強力に推進します。 また、グローバルエデュケーションハブで輩出した人材が諸外国で活躍することで、それら諸外国との友好関係の礎になることも期待します。