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有機エレクトロニクス高度化スクール 【千葉大学グローバルCOEプログラム】

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千葉大学 大学院融合科学研究科 グローバルCOE事務局
〒263-8522 千葉県千葉市稲毛区弥生町1番33号
TEL: 043-207-3891
E-mail: gcoe-tf[アットマーク]office.chiba-u.jp
URL: http://www.gcoe.tf.chiba-u.jp/




拠点リーダー・教授  上野 信雄
千葉大学 大学院融合科学研究科



1.有機エレクトロニクス・その特徴
本拠点は、有機半導体材料を用いたテレビ、照明、太陽電池、トランジスタなどの基礎ならびに応用をナノスケールの視点から研究する分野で、分子一つを電子素子として利用する極微の研究分野も含まれています。省エネルギー、環境問題の観点から世界中で注目されている新しい学術分野です。また、有機半導体材料で現れる性質の原因は、生体分子機能の原因と類似していると考えられ、将来多様な発展が期待されます。
正式に登録されている物質の種類は8,200万種以上にのぼり、その殆どが有機材料です。多くは弱い分子間相互作用によって固体を形成します。有機半導体は弱い分子間相互作用がもたらす電子機能性物質の代表でもあり、個々の分子の性質を反映しつつ、加えて集団として発現する性質が多くの新しい機能を提供してくれます。個性ある人間が大勢集まって大きな力・可能性を発揮することによく似ています。その電気・光学的な機能(物性)は、分子の個性と空間的かつ時間的揺らぎを伴う分子間の「複雑」な相互作用や異物質との接触界面での多彩な物理・化学現象に起因しており、これらの複雑さがこれまで「精密な」研究を拒んできた大きな理由です。すなわち、異物質間の接触がキーとなるトランジスタなどの有機薄膜デバイスの学理の解明とその開発が困難を極めた根元でもあります。その結果、本分野の研究は物理学、化学、電子工学などの異なる学術分野の知的資産を積極的に取り入れる柔軟性が必要であり、その雰囲気は、従来とは異なる創造性を有する若手育成の場となります。

2. 目的と将来展望
有機エレクトロニクス高度化スクールでは、21世紀Center-of-Excellence (21COE)の中心を担った有機半導体物性、デバイス開発のエキスパートに加えて、量子構造物性、スピン関連物性、物性・量子化学理論、物性化学分野等、関連分野の教員を集中的に結集し、進化する有機エレクトロニクスにおける物性素過程の基幹学理に関する教育・研究を、応用面にも視点を置いて推進します。加えて、長期にわたる高校生の啓発・育成を通して「先進科学プログラム(17才飛び入学・インテンシブ教育)」を創始・推進してきた持続力と第一級の研究実績を有する教員の連携により独自の教育研究文化を形成し、世界にも類例のない高等教育研究拠点を形成します。
活力ある若手を「発掘」し、基盤学理の探究と応用展開を「融合」させた雰囲気の中での高度化教育によって、(i)科学・技術の両面への真摯な姿勢をもち、(ii)高度な基礎学力と専門性を礎とし、(iii)挑戦的意欲に溢れ、かつ(iv)国際的視野を持つ人材を育成することを目的としています(図1)。

図1
【図1】 21世紀COEからグローバルCOEプログラムへの展開と拠点形成


3. 拠点形成
21COE「超高性能有機ソフトデバイスフロンティア」への千葉大学における全学的協力によって新たに設置した1) 大学院新研究科(工学部物性物理分野、理学部物理学科・物性分野、同化学科・物性化学分野が連携し高度化・国際化教育を推進する融合科学研究科ナノサイエンス専攻ナノ物性コース)、2) 学部新学科(工学部において物性物理系高度化教育を推進するナノサイエンス学科)、3) 新研究センター(教員間、院生間の連携研究を支援・推進する「分子エレクトロニクス高等研究センター(Advanced Institute for Molecular Electronics Studies: AIMES)」)を強化・発展させ、さらに、21COE活動で大きな成果を生み出した「人間相互作用空間(face-to-faceコミュニケーションの場)」のブランチを海外におき、加えて、人材発掘とインテンシブ教育を創始・推進してきた「先進科学プログラム」を大学院に展開し、高度化教育・研究を推進する「Advanced School for Organic Electronics」を形成します。すなわち、千葉大学の中に「突出した高等教育研究スクール」を確立します。

3.1. 研究推進
有機エレクトロニクスの基盤である「弱い相互作用による有機分子集合体の電子機能の学理の解明と応用」を推進し、21COEにおける世界最高レベルの研究を一層強化し世界拠点としての位置づけを確立します。このため有機半導体物性分野に加え、関連する物性物理・工学、物性物理化学、半導体デバイス工学分野を強化し、「知」の相乗効果を活用します。実験と理論、基礎と応用が研究センター(AIMES)に結集し、分野間の連携によって研究の新展開を図ります。研究推進組織として、基礎的アプローチによる「物性グループ」と応用的アプローチによる「デバイスグループ」をおき各専門性を反映した研究を行っています。国際連携研究統括のために「国際化チーム」を併設し選抜教員を配置して、研究をベースにした知的相互作用の増進、連携研究、国際協力教育の任に当たっています。
物性グループでは、精密な紫外光電子分光測定により、有機分子集合体および有機金属界面の電子構造の詳細に切り込んでいます。斬新なアイデアによって、実験・研究手法の改良・開拓などを行い、電気的性質の第一原理測定を開拓しています。弱い相互作用によって支配される分子性固体の電子論の学理を構築するとともに、対局にある強い相互作用(強相関系)における電子論を含めた総合的な議論を行い、低次元物性からスピン関連物性にいたる有機分子物性の新たな展開を切り開きます。デバイスグループでは、有機電界効果トランジスタ研究の創始者としての先見性を生かし、さらなる新規有機デバイスの開発に取り組んでいます。また量子効果、生体分子デバイスをも視野に入れ、基礎物性グループにおいて見出された知見の迅速なる融合を図っています(図2)。

3.2. 教育・人材育成
人材の育成は博士後期課程の教育強化だけで行えるものではなく、教育の高度化・国際化についても学部の教育土壌から改質する必要があり、すでに大学予算によるTOEIC受験制度の導入に加え、工学部において高度化基礎教育を担うナノサイエンス学科の新設を行いました。また大学院融合科学研究科・ナノサイエンス専攻・ナノ物性分野では、英語による専門科目講義や海外で行う国際研究実習などを導入してきました。グローバルCOEでは「高度化教育チーム」をおき、上記をベースに統一的なカリキュラムの改善によって高度化大学院教育を推進しています。
21COEで多くの成果を上げた「人間相互作用空間」の「海外ブランチ」の設置に加え、「国際シャトル計画」によって、大学院生などの若手研究者を海外の大学あるいは研究所に中長期(数ヶ月~1年程度)派遣し、共同研究を実施するとともに人間相互作用空間の学外拠点構築を図っています。派遣先の研究機関では、将来の共同研究あるいは連携の可能性も探り、海外での共同研究を積極的に推進し、国境のない教育を実施しています。
「院生の準教員化計画」では、職員宿舎の優先貸与、入学・授業料免除によって、院生の生活保障をベースに、基礎学力、専門性、国際競争力の育成を行っています。また「国際コミュニケーション能力開発」により、学生の能力に応じたクラスにわけ、ネイティブ講師による英会話スクールを開講しています。また「フレックスタイム」の英会話スクールも開講しています。また10年以上にわたり高校生の啓発・育成を培ってきた「先進科学プログラム(17才飛び入学)」における実績を踏まえ、新たに「先進科学大学院プログラム:先進国際コース」によって博士後期課程への「海外からの早期入学」の道を開拓しています。

図2
【図2】 グローバルCOEで取り組む研究ならびに教育体制の概要図
有機エレクトロニクスの総合的な理解へ向けて、理論・基礎物性・デバイス応用の各観点から、多角的かつ斬新な展開を行う。


4. おわりに
本拠点の研究には、物理学、化学、電子工学などの既存の学問の枠組みを超えることが必要です。その雰囲気は、挑戦力に富み、かつ従来とは異なる創造性を有する若手育成の場となります。工学部ナノサイエンス学科などでの大学生活4年間にその雰囲気の第一段階を経験し、大学院融合科学研究科ナノサイエンス専攻・ナノ物性分野で一層発展した教育を受けます。新天地を開拓する勇気と意欲のある若者を歓迎します。

ナノサイエンス学科URL: http://adv.chiba-u.jp/nano/nano-students/