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免疫システム統御による革新的治療法の開発を目指して 【千葉大学グローバルCOEプログラム】

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千葉大学 医学部 グローバルCOE事務局
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URL: http://www.isrt-gcoe-chiba.jp/





拠点リーダー・教授  中山 俊憲
千葉大学 大学院医学研究院



はじめに
千葉大学では、平成20年度から「免疫システム統御治療学の国際教育研究拠点」というプログラム名でグローバルCOE(Center of Exellence, G-COE)プログラムを推進することになりました。千葉大学大学院医学研究院と薬学研究院、そして、理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センター、放射線医学総合研究所が共同で拠点を形成します。免疫システムの研究、その統御による難治免疫関連疾患の治療に関わる研究開発を行い、この研究活動を通して治療学研究を担う若手研究者の育成を目指します。17名の事業推進担当者、コーディネーターが中心となり拠点を運営し、G-COE独立助教、G-COEフェロー、G-COE大学院生、アニュアル・ベストリサーチ・アワード、G-COE-CVPP(Chiba Visiting Professor Program)、免疫システム統御治療学講座の設置など、国際舞台で活躍できる人材育成のための数多くのユニークなプログラムが用意されています。これらのプログラムを通して世界的治療学研究者の育成システムの確立、新規の治療コンセプトの世界への発信、トランスレーショナルリサーチ・臨床試験・治験などの加速化とともに、これらに携わる人材育成と指導者の輩出を目指しています。

拠点の概要
アレルギー疾患は国民の3人に1人が罹患しているにもかかわらず、対症療法がほとんどで未だに根治療法が開発されていません。がんは国民の3人に1人が死亡する原因となっており、患者の高齢化に伴い良好なQOLの得られる低侵襲治療法の開発が求められています。アレルギー疾患やがんは、生体内で巧妙に調節されている免疫システムのアンバランスや破綻によって発症する、という共通の病因論的特徴があり、これらの疾患の発症機序に関してこれまでに免疫学は分子・遺伝子レベルで膨大な研究成果をあげてきました。その結果、「免疫システム統御」という視点に立脚した疾患治療法を開発できる段階に至っています。そこで、世界でも例をみない免疫システム統御による治療学に関する卓越した国際教育研究拠点を形成し、難治免疫関連疾患(アレルギー、がん、血管炎、動脈硬化など)を対象にした治療学研究を推進します。これらの研究活動を通して、
1. 免疫システム統御と免疫治療に関する統合的な知識と方法論を修得し、新たな視点から独創的な研究を遂行する能力
2. 領域横断的なアレルギー総合臨床治療研究やがん臨床治療研究を行いうる能力
3. 国際舞台で活躍する能力
若手治療学研究者がこのような能力を有することが出来るよう育成していきます。
基礎研究の成果の臨床応用は、千葉大学医学部附属病院内の臨床試験部と未来開拓センターを中心に行います。これまでの卓越した臨床研究の実績によって、医学部附属病院は平成19年から全国10箇所ある「治験・臨床研究の推進をはかる中核病院」に指定されています。連携して拠点を形成する理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センター(理研免疫アレルギーセンター)とは、教育上(連携大学院)のみならず、アレルギーの治療シーズを実用化すべく共同でトランスレーショナルリサーチを積極的に進めます。平成19年からは「千葉大学-理化学研究所研究者交流協定」を結び、若手研究者の施設間交流を強化してきましたが、理研の場を利用して千葉大学の大学院生や若手研究者の育成を加速化させます。放射線医学総合研究所(連携大学院)は、世界No.1の重粒子線治療の実績を持つ先進的がん治療研究施設で、千葉大学と密接に連携して21世紀COEプログラムを推進してきました。本拠点では、連携して重粒子線治療と免疫細胞療法の併用という世界で初めてのアプローチを中心としたがんの低侵襲治療法の開発研究と若手人材育成を行います。

研究活動
千葉大学大学院医学研究院は、日本でトップレベルの実績のある免疫学・アレルギー学の基礎研究者に加え、高度のアレルギー治療研究を行いうる専門家集団(内科、小児科、耳鼻科、皮膚科など)を形成しています。また、がんの治療研究について21世紀COEプログラムを継承した形での研究体制を取っています。研究活動としては以下のようなことを中心に行っていきます。
1. 免疫システムの統御機構の研究、疾患ゲノミクス、ファーマコゲノミクスや薬物動態学研究等の基礎研究:
免疫記憶の制御に関して新しい概念を提唱し、そこから免疫関連疾患の治療コンセプトの提示を行います。また、自然免疫系のNKT細胞による免疫制御機構の解析と治療シーズの発見、免疫系ヒト化マウスによるヒトの免疫系解析の基盤技術の開発を行います。この基礎研究から生み出される最新の研究成果(エビデンス)に基づいて、臨床研究を中心に以下のような展開を図っていきます。
2. 免疫システム統御によるアレルギー予防・治療法の開発研究:
スギ花粉症をターゲットにした臨床試験等を積極的に実施します。また新規薬剤の薬物代謝、動態学研究を行います。
3. がんに対する免疫細胞療法の開発研究:
肺癌・頭頸部癌を対象にして、NKT細胞に焦点を当てた免疫細胞療法の開発を行い、いくつかの治療法は先進医療として社会に還元することを目指します。また重粒子線治療と免疫細胞療法の併用治療を行い、低侵襲の新規治療法の開発を目指します。
4. 免疫システムの関与する心血管疾患の発症機序と制御法に関する研究:
免疫システムの関与する心血管疾患として動脈硬化、心筋梗塞、難治性血管炎等)の免疫細胞を標的とした制御と治療法の研究開発を行います。
このように免疫システムの関与する疾患に対する臨床研究を推進し、新しい治療学分野を樹立します(Figure 1)。

Figure1


大学院・ポスドク教育
領域横断的な公募によって関連領域の大学院生をG-COE大学院生として支援を行い、拠点プログラムに参加してもらいます。G-COE大学院生については指導教授の他に2名の関連分野の教員が担当となり、総合的な指導を行います。研究プロポーザルを審査し「萌芽研究レベルの独自研究資金」を与えるとともに、特に優秀な大学院生にはアニュアル・ベストリサーチ・アワードを授与し、研究へのモチベーションを高揚させます。COEフェローを選定し雇用するとともに、G-COE実施統括本部が直接、助言や成果報告の評価を行います。大学院生・若手研究者の国際化教育の推進のため、すでに独自に実施しているCVPP(海外から12名の客員教授、准教授が参画し、学生や若手研究者、教員が相互滞在をするプログラム)を理研免疫アレルギーセンターや放射線医学総合研究所の独自プログラムと融合させ、G-COE-CVPPとして発展させます (Figure 2)。

CVPP
千葉大学大学院医学研究院では、独自に外国の研究機関との連携体制:CVPP(Chiba Visiting ProfessorProgram)を構築し、大学院生や若手研究者の国際化教育を取り入れた若手研究者育成を推進してきました。CVPPをG-COE-CVPPとして発展させ、大学院教育や若手研究者育成に関してさらなる国際化の加速、グローバル化を図ります。カリフォルニア大学、ワシントン大学、コロラド大学、ハーバード大学、La Jolla Institute for Allergy and Immunology (LIAI)、Benaroya Research Institute、National Institute of Health (NIH)に所属する研究者を中心に12名でスタートしたG-COE-CVPPは、現在18名の客員教授、客員准教授が参画しています。これらの教授陣が所属する複数の施設および中国を含むアジアの大学とは施設間協定も結び組織的に交流を行います。これまでのCVPPの活動は、参画している客員教授・准教授が毎年数日から2週間千葉大学に滞在し、講演・研究討論・少人数ワークショップ等を行い、大学院生(演習の単位として認定)・ポスドクが独自の研究内容を発表し、アドバイスを受けています。さらに、本G-COE拠点では、大学院生・ポスドクが客員教授・准教授の施設を中心に2週間から3ヶ月の短期の海外研究滞在を行って、国際的な環境下での研究活動を早期から実体験しています。大学院生やポスドクの知の研鑽のため2-3年の長期派遣も行います。さらにCVPPコーディネーターを中心に、若手研究者が積極的に参加できるプログラムを備えた国際シンポジウム・ワークショップを毎年企画立案し実施します。すでに2009年1月6日に第1回G-COEシンポジウム、1月7-8日に第1回G-COEワークショップ、2月22日に第2回G-COEワークショップを開催し、その中で多くの若手研究者も発表を行い、活発な討論が行われました。

Figure2


終わりに
免疫システムの統御という観点から新規治療法の開発研究を行う我々のプログラムに興味のある学生、大学院生、若手研究者の方々は是非、千葉大学の我々の拠点「免疫システム統御治療学の国際教育研究拠点」にお越し下さい。なお、詳細は下記のホームページで随時最新の情報を公開しておりますので、是非アクセスをしてみて下さい。
http://www.isrt-gcoe-chiba.jp/