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掲載機関:大阪大学 大学院工学研究科マテリアル生産科学専攻 マテリアル科学コース(構造機能制御学講座)  掲載日:2014/04/21

新たな分野”キド・ワールド”を目指して






      藤原 康文

      大阪大学大学院工学研究科 
      マテリアル生産科学専攻
      マテリアル科学コース(構造機能制御学講座)


      Address : 〒650-0047 大阪府吹田市山田丘2-1
      URL : http://www.mat.eng.osaka-u.ac.jp/mse6/?FrontPage




藤原研究室の紹介動画は
こちらから↓




―はじめに―

「キド・ワールド」-それは大阪大学大学院工学研究科の藤原康文教授の造語で、「希土類元素(レア・アース)がもたらす桃源郷」を意味するといいます。希土類元素が持つ特有の機能に加え新機能性を追求し、2009年には窒化物半導体と希土類元素を結び付け、新たな手法による「赤色発光ダイオード(LED)」の作製に成功しました。この成果に対する関係研究者および企業関係者の関心は非常に高く、海外からの講演依頼も殺到するようになったといいます。青色LED開発の第一人者である中村修二・米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授も注目するこの成果は、どのようにして達成されたのか…そのレア・アースに対する想いに迫ります。


―これまでの「レア・アース」―

レア・アースとは、レアメタルの一部の元素(希土類)を指します。“レア”という言葉に似合わず、希少性は高くありませんが、中国の輸出規制による資源的問題から、国策として「省レア・アース」「脱レアアース」がキーワードとして挙げられている現状があります。しかし、希土類元素が有する機能は、近年の最新技術に欠かせない存在となっています。絶縁体に添加された希土類元素の発光特性は古くから研究されており、蛍光灯やプラズマ・ディスプレイの蛍光体として実用化されています。近年では白色LEDをはじめ、ハイブリッドカー、スマートフォン等へ適用されており、その必要性が明らかとなっています。


―まだ見ぬ「レア・アース」の魅力を追求する―
これら希土類元素(レア・アース)は、多くの優れた機能を併せ持っていますが、それら全ての機能を今の技術に活かしきれているとは言えません。実は、レア・アースには未だ物理的に解明されていない点も多く、発光機能や磁気機能のように一部の機能のみが蛍光体や永久磁石として実用化されているのが現状です。希土類添加における精密制御(添加サイトや周辺局所構造)やエネルギー伝達機構(励起・緩和の機構)の理解によるマテリアルデザイン的思考が欠如しており、レア・アースが持つ機能を更に追求することによって、ごく微量のレアアースでより高い機能を引き出し、これらの機能の融合から新たな応用性も見えてきます。


―希土類添加半導体 赤色LED―
我々の研究室では、レア・アースの持つ特有の発光機能や磁気機能の究極性能の追求に加え、新たなマテリアルおよびデバイスを生み出すべく、新機能性の開拓に日々研究を重ねています。近年の研究成果の中で世界的に注目されているものとして、2009年に発表した「希土類元素添加による窒化物半導体赤色LEDの作製」が挙げられます。なぜこんなにも世界から注目されているのは、その発光原理の違いです。窒化ガリウム(GaN)を使用した青色・緑色LEDは、電気エネルギーから光エネルギーへの変換で発光しますが、赤色のような長波長を実現するには、良質な半導体がうまく成長しないことに加えて、固有の内部電界効果(ピエゾ効果)が強くなるために発光効率が落ち、青・緑と同等の明るさにできませんでした。我々が作製した赤色LEDは、電気エネルギーを受けると、添加したユウロピウム(Eu)自身が発光するという仕組みになっています。従来の赤色LEDは、GaAs基板の上に成長したアルミニウム・ガリウム・インジウム燐といったGaAs系の半導体を使ったものでした。レアアースであるユウロピウム(Eu)をGaN系半導体に添加することで、同じくGaN系半導体を使用している青色・緑色LEDと活性層以外は同様の構造となるため、同一基板上に窒化ガリウムを材料として光の三原色(赤、青、緑)を集積することが可能となります。このため、小型かつ高精細LEDディスプレイや次世代照明への応用性もあり、注目を集めています。特に画期的なのは、室温下で乾電池程度の低電圧でも発光する点で、発光波長も621nmと、理想的な赤を表現できています。明るさも年々増大し、あと1桁輝度が上昇すれば実用化への見通しが立ちます。


―リスクを恐れず、新たな分野”キド・ワールド”を目指して―
我々は赤色LEDだけではなく、乾電池をつなぎ簡単に発振できる、希土類イオンを用いたレーザーの開発にも取り組んでいます。希土類材料に関する理論面からのアプローチは実験に比べ遅れており、添加母体から希土類イオンへのエネルギー輸送機構については世界的に見ても、手つかずの研究課題です。希土類添加半導体を中心とする”キド・ワールド”の創生を目標に、まだ見ぬ可能性を見出すためにも、実験屋としての使命を果たすべく、新たに挑むべき技術領域も構想されています。


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