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掲載機関:東京大学 大学院農学生命科学研究科 生物・環境工学専攻 生物環境工学研究室  掲載日:2011/11/10

分光分布を制御可能な発光ダイオード擬似太陽光光源システム 【東京大学 富士原和宏】

富士原 和宏 教授
東京大学 大学院農学生命科学研究科
生物・環境工学専攻 生物環境工学研究室


〒113-8657 東京都文京区弥生1-1-1
http://www.kankyo.en.a.u-tokyo.ac.jp/member/fujiwara/


クリスマス用の電飾や信号機などにも利用され、私たちの生活にすっかり浸透してきた発光ダイオード(LED)は、生物に及ぼす光の影響を調べる研究(光生物学研究)でも利用されています。その光生物学研究用として、新しいユニークなLED光源システムの開発が進められています。

現在の光生物学研究でのLED利用
LEDの種類を選ぶことで、ある程度「いろいろ」な単色光を用意できます。そこで、調べてみたいと思う単色光あるいは複数の単色光を組み合わせた混合光を、研究対象とする生物や植物の個体、器官、細胞などに、ある期間(時間)、一定の強さ、一定の分光分布で照射して、どのような反応・応答が得られるかが世界中で調べられています。でももし、照射光の分光分布を自由に動的に制御できる光源があったら、これまで調べることのできなかった様々な光環境に対する反応・応答を調べることができます。そうすれば、もっと多くの重要な知見が次々と発見されるようになるでしょう。

太陽光とそっくりの光を作って、それを自在に操る!
地表面における太陽光に近似した分光分布の光を基準光として作出できるだけでなく、その基準光に任意の波長範囲の光を加えたり減じたりして様々な分光分布の光をも作出でき、しかもそれらの光をどのような順番でも自由自在に連続して照射することのできる光源システム(正式名称は、分光分布制御型LED擬似太陽光光源システム)を開発しています。太陽光を基準光としているのは、地上の生物にとって重要な光であるからです。様々な分光分布の光を作出するため、光源にはピーク波長の異なる32種類のLEDを用い、分光分布の制御は各ピーク波長LEDへの印加電圧(結果的に供給電流)を調節することで行っています。現在の光源システムは第2世代であり、光照射口の面積は7cm2、得られる放射照度(光強度)は、夏至の快晴日南中時の太陽光の1/5程度(波長範囲380~940nmに対して111Wm-2)ですが、近いうちに、光照射口の面積は現在の約10倍、放射照度は約2.5倍となる第3世代光源システムが完成する見込みです。


写真1
写真1.LED擬似太陽光光源システムの全景
光源ユニットはその周囲気温を15ºCに制御するためのグロースチャンバ内に設置されている。スペクトロメータは光照射口における分光放射照度(光源照射光SI)計測時にのみ設置。


写真2
写真2.放射照度が東京都文京区の快晴日(2007年5月12日)13時における太陽光の約1/6である分光放射照度に最も近似すると推定した分光放射照度(推定最良近似SI)を与える電圧を実際に印加したときのLEDモジュール。ピーク波長が810 nm以上のLEDはこの写真では点灯していないように見える。


写真3
写真3.放射照度が東京都文京区の快晴日(2007年5月12日)13時における太陽光の約1/6である分光放射照度に最も近似すると推定した分光放射照度(推定最良近似SI)を与える電圧を実際に印加したときの光源照射光


図1
図1.放射照度が東京都文京区の快晴日(2007年5月12日) 9時、11時、13時、および15時における太陽光の約1/6である分光放射照度(目標SI; 1/6太陽光SI)、光源照射光が目標SIに最も近似すると推定した分光放射照度(推定最良近似SI)、および推定最良近似SIを与える電圧を実際に印加したときの光源照射口における分光放射照度(光源照射光SI)。上に示した光源照射光は2秒間隔で連続して照射され、本光源システムが分光放射照度を動的に制御できることが実証された。


引用文献:
Fujiwara, K. and A. Yano (2011) Controllable spectrum artificial sunlight source system using LEDs with 32 different peak wavelengths of 385–910 nm. Bioelectromagnetics 32(3): 243-252.
Fujiwara, K., T. Sawada, S. Goda, Y. Ando and A. Yano (2007) An LED-artificial sunlight source system available for light effects research in flower science. Acta Horticulturae 755: 373-380.
Fujiwara, K. and T. Sawada (2006) Design and development of an LED-artificial sunlight source system prototype capable of controlling relative spectral power distribution. Journal of Light & Visual Environment 30(3): 170-176.