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掲載機関:大阪大学 大学院医学系研究科 呼吸器・免疫アレルギー内科 感染病態グループ  掲載日:2011/06/10

生命現象のナビゲーター「セマフォリン」

 熊ノ郷 淳 教授
 大阪大学微生物病研究所 免疫学フロンティア研究センター


 Contact
 Address: 〒565-0871 大阪府吹田市山田丘3-1
 URL: http://www.biken.osaka-u.ac.jp/lab/immunopathology/










生命が発生する過程では、いろいろな細胞が増殖・分化し、脳、神経、心臓、血管、肺、腎臓、腸などの組織や器官を作っていきます。一旦体作りが終了すると、今度は外界に存在しているウイルス、細菌、寄生虫などの病原体から身を守るための仕組みである免疫を働かさねばなりません。生命がこのような複雑な仕組みを作り、それを維持するためには、いろいろな信号役のタンパク質が働いています。

私たちが研究しているセマフォリンタンパクは、1990年代に発生過程における神経の進む方向を決定する神経ガイダンス因子として同定された分子群です。セマフォリンの名前の由来は「手旗信号」を意味する「semaphore」から来ており、これまでに20種類を越えるメンバーが見つかっています。

当初は神経の信号と考えられてきたセマフォリンですが、今ではその働きは神経系にとどまらず心臓、血管、癌の抑制、免疫調節など、非常に多岐にわたることが明らかとなっています。私たちは2000年に免疫細胞で発現するセマフォリンタンパクSema4Dの研究を通じてセマフォリン蛋白質が実は免疫系において重要な役割を果たしていることを世界に先駆けて明らかにしました。私たちの研究結果から免疫系におけるセマフォリン分子の重要性が広く認識されるところとなり、現在免疫系において機能するセマフォリン分子群は「免疫セマフォリン分子群:immune semaphorins」の名称でも呼ばれ、「我が国発の新しい免疫調節分子のパラダイム」として国際的にも評価されています。

最近の研究では、このセマフォリン分子群の働きを強めたり弱めたりすることでいろいろな病気を治療することが出来る可能性が出てきました。

たとえば、
1) 花粉症、アトピーなどのアレルギー疾患
2) 関節リウマチ、多発性硬化症などの自己免疫疾患
3) がんの進行阻止
4) 不整脈
5) 交通事故時の神経損傷の再生
6) 高齢化に伴い増加している骨粗鬆症
などが、セマフォリンをコントロールすることで治療できる可能性がある疾患として期待されています。つまり、セマフォリンの機能を研究していくことにより、さまざまな病気の治療薬を開発できる可能性があるのです。







Profile
くまのごう あつし
昭和60年大阪教育大学付属高等学校池田校舎卒業
平成3年大阪大学医学部医学科卒業
大阪大学医学部付属病院、大阪逓信病院(現NTT西日本病院)での内科臨床を経て、
平成5年〜平成9年大阪大学医学系研究科大学院平成9年より大阪大学微生物病研究所助手。
微生物病研究所に移った後、当時神経ガイダンス因子とされてきたセマフォリンの免疫系における役割を初めて明らかにする。
平成15年12月、同助教授、平成18年6月から微生物病研究所感染病態分野教授。
平成19年10月からは世界トップレベル国際研究拠点「大阪大学免疫学フロンティア研究センター」教授(微生物病研究所は兼任)。