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掲載機関:京都大学 医学部附属病院 探索医療センター 探索医療臨床部  掲載日:2012/06/20

新規マクロファージ活性化制御因子EPRAP/FEM1Aの機能解明

南 学 (みなみ まなぶ)
京都大学医学部附属病院 探索医療臨床部
動脈硬化・代謝疾患研究室


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Address: 〒606-8507 京都市左京区聖護院川原町54
京都大学医学部附属病院 探索医療センター 131号室
URL : http://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~rinsho/research/research_minami/index.html


私たちは、糖尿病や脂質異常症など生活習慣病を背景とした動脈硬化性疾患の発症機序の解明と、治療法の開発に取り組んでいます。

わが国の死因の約30%は、心臓病と脳血管障害(脳卒中)を合わせた循環器疾患であり、その多くは動脈硬化が原因でおこる血管病です。これら循環器疾患による入院・通院患者数や国民医療費の総額は、死因の1位であるがん・悪性新生物と比較しても格段に多く、また要介護の原因の約3割を占めるなど、循環器病、特に動脈硬化性疾患の克服は国民的課題と言えます。


マクロファージの過剰活性化と動脈硬化・代謝疾患の関係


動脈硬化の発生機序破棄らかにされていません。特に、「プラーク」とよばれる血管内膜の肥厚部分が破綻することが動脈硬化の発症に大きく関与することは分かっているのですが、その分子メカニズムについて、いまだ詳細は十分に明らかにされていません。しかし、プラークの主要な構成細胞であるマクロファージが中心的な役割を果たしていることに疑問の余地はありません。血管壁に浸潤したマクロファージは、変性LDLを取り込み泡沫化してプラークを構成する一方で、局所に慢性的な炎症刺激をもたらし、プラークの破綻、血栓性閉塞の発症に大きく関与しています。

また、現代病とも言える、過食や運動不足による肥満(内臓肥満)では、脂肪組織に浸潤したマクロファージによる慢性炎症が、全身のインスリン抵抗性を増悪させ、その結果2型糖尿病が引き起こされます。
マクロファージは組織の修復などに必須の細胞ですが、過剰な活性化は、糖尿病や動脈硬化性疾患をはじめ、悪性腫瘍や骨粗鬆症など様々な難治性疾患・慢性疾患の病態生理にきわめて重要な役割を果たしていることが分かっています。

私たちは、マクロファージ活性化制御の分子メカニズムの解明を通して、これら慢性難治性疾患の早期診断や新たな治療法の開発を目指しています。特に、マクロファージ活性化制御に関わるシグナル伝達分子やその修飾因子を主な研究対象としています。
さらに最近は、慢性炎症や栄養環境に応じた「代謝リモデリング」と、動脈硬化・心血管疾患との関連を研究対象に拡げ、ミトコンドリアやシグナル制御遺伝子のエピジェネティクスなどの研究にも取り組みはじめています。


新規マクロファージ活性化制御因子EPRAP/FEM1Aの機能解明


私たちは、これまで、プロスタグランジンE2 (PGE2)が、EP4受容体およびEP4受容体結合蛋白として新規にクローニングされたEPRAP/FEM1Aを介して、炎症刺激によるマクロファージの活性化を特異的にかつ強力に抑制すること;さらにそのメカニズムの一つとして、EPRAP/FEM1Aが、NF-kB及びMEK/ERK経路の細胞質における抑制性結合因子であるNF-kB1 p105と結合し、EP4受容体シグナル依存的に炎症刺激後のp105のリン酸化と加水分解を抑制することを見いだしました (Minami M, et al. J Biol Chem, 2008) 。

EP4受容体-EPRAP/FEM1Aシグナルは、病巣に浸潤したマクロファージに特異的に作用しその過剰な活性を制御することから、副作用の少ない新規治療標的となる可能性が期待されています。また、EPRAP/FEM1Aは、抗炎症作用以外にも、代謝やがんなど、様々な疾患で重要な役割を果たしている可能性が、私たちのこれまでの研究から示唆されています。しかしながら、EPRAPの抗炎症作用発現の分子メカニズムについては未だ不明の点が多く、生体での本来の機能もよく分かっていません。

私たちは、EPRAP/FEM1Aノックアウトマウスを独自に作成し、現在、分子生物学的手法、生化学的手法を駆使し、国内外の共同研究者とも協力し合いながら、EPRAP/FEM1Aによるマクロファージ活性化制御の分子メカニズム、さらに、様々な病態モデル動物を用いて、EPRAP/FEM1Aの各疾患における病態生理学的意義の解明に、精力的に取り組んでいます。