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大阪大学医学部附属病院・医療情報部の取り組み (2012年9月27日掲載)

現在、病院内のあらゆる情報が電子化されネットワークで電送され、業務の合理化が進んでいます。
例えばオーダシステム。外来や病棟から薬剤部や検査部などの中央診療部門へ情報伝達するためのオーダは、早くから電子化され、患者側からは見えない部分で、大幅な効率化が図られてきました。また、1999年に厚生省(当時)が診療録の電子媒体による保存を認める通達を出してからは、診療記録をコンピューターで管理する電子カルテシステムが開発され、各病院に普及し始めています。

医療情報の電子化が進めば、医師と看護師、医師と各中央診療部門など、病院内の情報連携がスムーズになるばかりだけでなく、病院と病院の連携も容易になり、地域医療連携の推進が期待されます。
大阪大学医学部附属病院でも、医療情報の電子化を積極的に進め、2010年には、診療記録の電子化および画像情報の電子化を完了しました。これにより、同院の医療情報は完全に電子化されたのです。今後院外への拡大も期待される同院の特徴的な医療情報システムを紹介します。

病院内の連携をスムーズにする「指示」の電子化

同病院では、医師から看護師へなされる指示の電子化にも早くから取り組んできました。指示の電子化が進むことで、病棟内の情報伝達が確実なものとなり、コミュニケーションエラーが減り、医療記録も詳細で正確になります。以下に、同院が採用してきた主な指示システムを紹介します。

処方指示カレンダー

処方指示カレンダー

(画像提供:大阪大学医学部附属病院 医療情報部)

処方オーダは薬剤部から薬を取り寄せるための内容になりますが、患者へ投与する際の指示は、オーダの内容とは異なってきます。例えば、患者の体調の変化によって、ある日の夕方から量を減らすなどが指示されます。また、患者の服用忘れなど、医師が指示した通りに服用されない場合もあります。指示システムでは、1回服薬毎の指示が細かく記録され、このデータが服用記録システムに連携され、患者がいつ薬を飲んだかについても記録することができます。
指示には注射の投与に関するもの、安静度や観察等に関するものがあり、これらを全て電子化しています。

レジメンシステム

レジメンシステム

(画像提供:大阪大学医学部附属病院 医療情報部)

レジメンシステムは、複雑な抗がん剤の投与プランの作成を支援しています。標準的な抗がん剤の量を、患者の体表面積等から自動で計算して示します。最終的に確定した量を投与するために、最もコストが抑えられる薬の規格の組み合わせを示し、医師のオーダを支援してくれます。
副作用が強く出た場合には、医師は、次の投与までの間隔を空けるなどの投与プランの変更をします。こうした抗がん剤プランを、リアルタイムに薬剤師、看護師とも共有することができる画期的なシステムです。

クリニカルパスシステム

クリニカルパスシステム

(画像提供:大阪大学医学部附属病院 医療情報部)

手術症例などでは、入院期間中の治療や検査の手順は、手術内容毎に予め決められています。これをクリニカルパスと呼びます。クリニカルパスシステムは、予め登録されたクリニカルパスを患者に適用することで、診療プロセスが統一化され、個々にオーダや指示を出す手間が省かれます。各患者の特殊な事情がある部分については修正されます。
同病院では、入院患者の約45%にクリニカルパスが適用されています。

PDAによる確認

PDAによる確認

(画像提供:大阪大学医学部附属病院 医療情報部)

注射薬を投与する際、患者間違いや指示の見落としを防ぐためのシステムです。PDAにより患者のリストバンドのバーコードと、点滴や処方箋などのバーコードとを連続して読ませることにより、患者の間違いがないか、投与しようとしている薬が最新の指示に従ったものであるかがチェックされます。

医療情報の一元管理を目指して-DACS

同院の医療情報電子化における特徴的なシステムの一つにDACSがあります。DACS(Document Archiving and Communication System)は同院の医療情報部が提唱したコンセプトで、診療記録を文書の集合として捉え、これを統合して管理・運用するためのシステムです。

同院で扱われる医療情報は125式のサーバで管理され、2,000台以上の端末で閲覧・利用されています。その中には、電子カルテを構成するものが含まれます。同院の電子カルテシステムはマルチベンダー構成であり、14社の42システムが、診療記録文書を作成しています。
これら各システムのソフトウェアは異なっており、文書の形式も違っています。各文書はWeb環境があれば、患者のカルテ画面からその患者の文書を呼び出すことはできるのですが、システム毎に閲覧画面を呼び出す入口が異なっています。このために、患者にどのような情報があるかの全体像を把握することができません。また、患者に情報を開示する際に、個々のシステムにその患者についての文書が保存されているかをまず確認しなければならないため、出力もれの恐れがありました。さらに、時系列に沿って順番を並べ替える作業にも手間がかかりました。
また、今保存した文書を、20年後あるいは30年後には閲覧できなくなる心配がありました。データを長期に保存することができても、これを閲覧させるためのアプリケーションソフトウェアは、ハードウェアが更新され、オペレーションシステムが新しくなっていく中で、継続的に機能させることが難しいと予想されるからです。

同院の医療情報部では、これらの医療文書を管理する責任ある立場として、診療記録を紙媒体から電子媒体に置き換える場合には、診療記録データを一元管理し、長期閲覧を保証する仕組みが必要と考えてきました。そこで診療記録の電子化を進める中で、文書の電子媒体での管理に強みを持つ企業と共同で、統合文書管理システムの開発にあたりました。同社との議論の中で辿りついた結論は、文書をPDFに変換して集約する方法でした。PDFであれば30年後でも閲覧できる可能性がありますし、もし使えなくなっていたとしても、PDFを新しい文書フォーマットに変換するソフトがでてくるはずです。 文書を統一規格で一つのシステムの中で管理することで、必要となった際には、一斉に変換するなどの対応がとれ、長期の閲覧を保証することができるとの結論に至ったのです。
文書を一元管理することで、患者の保有する情報を統合的に閲覧することが可能となります。関心のある患者について、どのような情報があるかが把握でき、その中で重要なものがどれかを見つけ出すことができます。これにより、患者の病歴把握がしやすくなり、重要な情報の見落としを減らすことにもつながります。

DACSは、医療連携を促進する上でも効果を発揮する可能性があります。複数の医療機関が、共有する外部のDACSサーバに情報を保管すれば、各医療機関で作成される医療情報は、患者がどの医療機関を受診した場合でも閲覧できるようになります。また、かかりつけの病院から遠く離れた地で病気を発症しても、受診した病院でこれまでの治療記録を閲覧することが可能になります。さらに、災害などのために病院の電子カルテサーバがダウンしても、外部のDACSサーバ内に保管されている情報を利用して診療を継続することが可能となります。
このような壮大なDACSの構想を実現するには、時間もコストもかかります。またこうしたシステムを管理する体制も必要になります。大阪大学医学部附属病院では、この構想を実現させるために、今後さらに研究開発を進めていきます。

DACSによる保管情報の閲覧ビューワー

DACSに保管された情報は、マトリックスビュー、フォーカスビューの2種類のビューワーで閲覧することができます。
保管された情報の効果的な活用を支援しています。

マトリックスビュー

マトリックスビュー

(画像提供:大阪大学医学部附属病院 医療情報部)

患者が、いつ受診し、いつどの科で入院したか、いつどのような手術を受けたか、いつどのような検査を受けたかが俯瞰できます。同病院の文書書式は約2,700種類ありますが、このビューワーでは、それらが整理され表示されます。患者の情報が、このビューワーによって非常に探しやすくなりました。

ツリービュー

目的の文書を検索するための画面です。入院外来の別、診療科別、目的別、文書種別などの条件で、必要な文書を素早く探すことができます。

ツリービュー

(画像提供:大阪大学医学部附属病院 医療情報部)

フォーカスビュー

フォーカスビュー

(画像提供:大阪大学医学部附属病院 医療情報部)

マトリックスビュー、フォーカスビューから文書が選択されると、その文書が表示されます。過去の同種の文書を同時に表示しますので、前回と今回の検査レポートのデータを比較することが簡単にできるようになりました。

電子カルテシステムの入力を支援する「入力テンプレート」

大阪大学医学部附属病院の電子カルテは、医療情報部によって発案された独自の入力テンプレートが採用されています。

この入力テンプレートは階層構造になっており、ある項目にチェックを入れると、さらにその詳細の項目が表示され、入力できるように誘導されます。また、入力データは、ワープロ入力したような分かりやすい表現に変換されて電子カルテに記録されます。その一方で、コンピューターが分析処理できる構造化データとしても保存されています。つまり、このテンプレートで入力することで、人間が理解するための自然言語表現のデータと、コンピューターが処理できるXML形式の構造化データの二つが同時に作成されるのです。

入力テンプレート

(画像提供:大阪大学医学部附属病院 医療情報部)

入力画面は、項目にチェックを入れていく形式。チェックした項目によって次の入力項目が変化していきます。

入力テンプレート2

(画像提供:大阪大学医学部附属病院 医療情報部)

入力したデータは、ワープロで編集した文章のように変換されて表示されます。

入力テンプレート3

(画像提供:大阪大学医学部附属病院 医療情報部)

その一方で、コンピューターが処理できるXML言語としても記録されます。

この入力テンプレートでは、患者の年齢、性別、身長、体重、検査結果などのデータを電子カルテのデータベースから自動で取り込むことが可能です。テンプレートを立ち上げたとき、すでに入力された状態となりますので、電子カルテ内で転記する作業が不要となります。

テンプレートで入力したデータはデータベースに蓄積され、全患者データをまとめて出力することができ、エクセル形式にダウンロードすることもできます。ここで集められたデータはそのまま臨床研究のデータとして活用することができます。

情報は洪水のようにあふれているのが実態です。そのような中で、きちんと整理された情報は大きな価値を持ちます。同病院では、膨大な情報の中で必要な情報が整理され、必要な時に必要な人が利用できることを重視して医療情報の電子化を進めてきました。今後、さらに見やすい情報閲覧システム、高度な情報処理システムが、医療の質向上に貢献していくとともに、地域の医療機関の連携を促進していくことが期待されます。

大阪大学附属病院 医療情報部のウェブサイトはこちら
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