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レーザーによるマイクロ移動体の遠隔駆動・制御 【北海道大学 梶原逸朗】

梶原 逸朗 教授 梶原 逸朗 教授
北海道大学大学院工学研究院 人間機械システムデザイン部門 スマートメカニズム研究室


Address: 〒060-8628 札幌市北区北13条西8丁目
URL: http://labs.eng.hokudai.ac.jp/labo/lsm/?page_id=127
E-mail: ikajiwara[アットマーク]eng.hokudai.ac.jp
Profile
かじわら いつろう 1964年2月1日生まれ。1988年3月東京工業大学大学院理工学研究科機械工学専攻修士課程修了。工学博士。1990年4月 東京工業大学工学部機械工学科助手。2000年4月 東京工業大学大学院理工学研究科機械宇宙システム専攻助教授。1997年9月~1998年6月米国フロリダ大学客員研究員(文部省在外派遣研究員)。2009年4月より現職。専門は、複合領域最適 化、運動と振動の制御、スマート構造、レーザー応用技術など。





はじめに
マイクロ移動体は、監視・観測・探査の分野での活用が期待されている。本研究では、レーザーによりマイクロ移動体を非接触かつ遠隔操作で駆動・制御できるシステムを開発した。本システムは、レーザー双方向通信技術およびそれを実現するための光学システムで構成されている。レーザー通信技術ではレーザーの高指向性によりパワーを集中して伝送できるため、送・受信装置の小型・軽量化につながる。レーザー双方向通信技術は、レーザー光源側から移動体への駆動指令、および移動体からレーザー光源側への情報伝達を行うシステムから成る。前者は、レーザーを移動体に追尾させながら移動体の遠隔制御を行うパルスレーザー追尾/制御システムで構成される。後者は、MEMSミラーを使ったレーザー通信システムであり、MEMSミラーで反射光の軌道を振動させることにより情報 伝達を行う。これら2つの技術を融合した統合レーザー追尾/通信システムを開発し、マイクロ移動体の双方向通信に基づく遠隔制御 実験を行い、本システムの有効性を検証した。本技術の特徴は、単一のレーザーのみで上述の遠隔駆動・制御が可能なことである。

移動体駆動・制御のためのレーザー双方向通信
本研究では、レーザーを移動体に追尾させながら移動体の遠隔制御を行うパルスレーザー追尾/制御システムと、MEMSミラーを使ったレーザー通信システムの2つの技術を融合した。
パルスレーザー追尾/制御システムは、レーザー追尾とレーザー制御の2つの機能を有し、光源側(指令側)から、移動体側に信号を送信するシステムである。レーザー追尾は運動する移動体にレーザーを常に照射する技術であり、レーザー光路上に置かれたガルバ ノミラーの角度を制御することにより実現される。レーザー制御はパルス発振されたレーザー光により指令信号を送信し、移動体を遠隔制御する技術である。パルスレーザー追尾/制御システムはレーザー、コーナーキューブリフレクタ、ガルバノミラー、PSD、ビームスプリッタ、フォトトランジスタから成る。
MEMSミラーを使ったレーザー通信システムは、レーザー追尾システムのレーザーを移動体に搭載されたMEMSミラーの駆動によって微小振動させて反射(指令側に返送)することにより、移動体側から光源側(指令側)に情報を伝達する技術である。このシステムでは、 送信に必要なエネルギーがMEMSミラーの駆動エネルギーのみなので、移動体側のエネルギーコストを抑えることによりバッテリの小 型・軽量化を図ることができる。

図1
【図1】 レーザーによる遠隔駆動・制御システムの光学系

移動体の遠隔駆動・制御
MEMSミラーを用いたレーザー通信により、移動体の位置情報をレーザー装置側へ通信し、その情報を基に、パルスレーザーを用いたレーザー通信により、移動体へモータの駆動指令を通信する。これにより、レーザーによる移動体の遠隔制御を実現させる。
図1に本システムの構成を示すが、これまでに述べたレーザー追尾、MEMSミラーおよびパルスレーザーによるレーザー通信の三つのサブシステムから成る。ガルバノミラーで反射されたレーザーは、移動体側のビームスプリッタで分割される。方向を変化させられた反射光は、MEMSミラーで再び反射し、コーナーキューブリフレクタで再帰反射することにより、追尾の役割を担う。同時に、ロータリエンコーダのカウントを基に微小振動するMEMSミラーで反射することで、レーザーの軌道自体もMEMSミラーの駆動周波数に等しい周波数で微小振動したままPSDへ入射する。レーザー装置側でこの振動周波数を検出することで移動体の位置情報が得られる。この位置情報を元にレーザーのパルス周波数を変調する。一方、移動体側のビームスプリッタ透過光は、フォトダイオードへ入射され、移動体への指令信号が送信されることになる。この構成により、フィードバックシステムが構成され、レーザーによる移動体の遠隔駆動・制御が実現される。図2に示す小型移動体を用いた実験により、各要素システムの機能を検証すると同時に、レーザー双方向通信システムによる移動体の遠隔駆動・制御を実現した。

図2
【図2】 移動体の遠隔駆動・制御実験の様子

おわりに
小型移動体を用いた実験において、パルスレーザー追尾/制御システムおよびMEMSミラーを用いたレーザー通信システムの機能を 確認するとともに、レーザー双方向通信による移動体の遠隔駆動・制御を実現し、その有効性を検証した。本技術は、宇宙空間や惑星・衛星上で使用される人工衛星・探査ローバーをはじめ、MEMSなどの先端機械システムにおける駆動・制御システムとして幅広く適用可能であり、その発展が望まれる。