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がんのウィルス療法


概要

がんは、日本人の死因第一位にあげられている疾患であり、年間30万人以上が亡くなっている。現在の主ながんの治療法といえば手術療法、放射線療法、抗がん剤療法、免疫療法だが、いずれも懸念材料が未だ多く残っている。例えば、外科手術では除去しきれなかったがん細胞による再発、抗がん剤の副作用によるおう吐や脱毛などに多くのがん患者が苦しんでいる。
これら従来の治療法による問題をクリアするため、1990年代頃から、「ウィルス療法」という新たな治療法が世界各国で研究されている。この治療法では、まず、がん細胞にのみ感染するように、ウィルス遺伝子を人工的に組み替える。そのウィルスを、がん細胞に感染させ、ウィルスが増殖しながら細胞を破壊していく性質を利用して、最終的にがん細胞を破壊、死滅させる。また、現在研究がすすめられている新世代のウィルスは、感染すると免疫系に感知されて生体防御反応を起こし、最終的にはウィルスに感染していないがん細胞も死滅させられる。
ウィルス療法には、以下のようなメリットが期待されている。
-脳腫瘍など治療の難しい部位も含め、あらゆる固形がんへの適用が可能
-既存の化学療法や放射線治療との併用が可能
--抗がん剤のように、骨髄に影響せず蓄積する副作用がないため反復投与が可能
サイトカインなどの治療遺伝子をウイルスゲノムに直接組み込んで抗腫瘍効果を増強できる
また、感染させるウィルスには抗ウィルス薬が存在するので、病態に合わせ治療を中断することも出来る。

藤堂 具紀 教授とG47Δ
日本におけるウィルス治療研究のさきがけとなったのが、現在、東京大学医科学研究所教授の藤堂具紀である。藤堂より以前に、アメリカでは、がん治療に有利な特長を多く備えるヘルペスウィルスHSV-1をもとに、G207の開発に成功、臨床実験が進められていた。藤堂はウィルスの抗がん作用をさらに高めるために、HSV-1を応用したG47Δを新たに開発した。G47ΔはG207に比べ、高い抗がん作用を持つだけでなく、患者のがん細胞への免疫反応を強く引き起こす。また、これまで欧米で研究されていたウィルスでは、正常細胞に対する病原性をゼロにすることが不可能だったが、動物実験においてG47Δはそれを可能にした。

がん治療の今と今後の展望
日本におけるG47Δの臨床研究は2009年にスタートした。まず脳腫瘍から始まり、2013年5月には前立腺がんの臨床実験も開始。2013年9月からは嗅神経芽細胞腫の臨床実験も開始された。これらの、人体に対するG47Δによるウィルス治療の実験は世界初の試みである。
日本のがん関連医療技術は世界でもトップクラスを誇るが、急速な高齢化や、人材不足などから、予防・治療が追い付かず、日本のがん患者数は増え続けている。こういった状況において、応用範囲が広く、実用面で優れているウィルス療法には大きな期待が寄せられている。実用化と普及が進めば、日本のがん治療、そして医療界全体の発展につながるだろう。

ライター:Hiromi Jitsukata

2014.12.4 執筆
http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/glioma/treatment/virus.html
(東京大学医科学研究所附属病院 脳腫瘍外科)