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株式会社ワコム・電子ペン入力方式タブレット


概要

コンピューターグラフィックスは、伝統的な画材を用いたような表現から、現実の風景のようなリアルな表現まで多彩に実現することができ、アーティストや職人、グラフィックを趣味とするあらゆる人々に対し、作業の効率化や表現の多様化に貢献している。
そんなコンピューターグラフィックスの現場に欠かせないのがグラフィックスタブレットである。映像制作、メーカーでのプロダクトデザインや設計図の製作、雑誌や書籍のイラスト制作、マンガの執筆など、今日あらゆるグラフィックがタブレット上から生み出されている。今回紹介するワコムは、電子ペン入力方式のグラフィックスタブレット、いわゆるペンタブレットの世界的な企業である。その製品は、世界中の製造業、ファッションデザイン業、さらに映画やアニメーションなどのエンターテイメント産業で活躍しており、同社のプロフェッショナル向けペンタブレットは世界シェア8割以上で推移していきた。

同社が設立されたのは1983年。当初は文字入力や設計用の電子ペンで革新的な製品を生み出すことを目指し、早くも翌年の1984年には、世界で初めてのコードレスペンタブレットを発売した。ペンタブレットといっても、自由自在にグラフィックスを制作するものというより、これは製図などにおいて画面上の位置をタブレット上から正確に示す「デジタイザー」であった。1980年代後半に、同社の社員が電子ペンの先に筆をつけて試してみたところ、「思った以上に面白い」描画が得られたため、コンピューターで絵を描くためのペンタブレット開発が進められた。そして1987年にプロフェッショナル用のグラフィックス作成ペンタブレット「SDシリーズ」が発売された。これはグラフィックス作成用ペンタブレットとしては世界初のコードレス機でもあった。1990年にはこのシリーズがアメリカのウォルトディズニー社の目にとまり、映画「美女と野獣」の制作に投入されている。
同じく1990年、同社初の液晶一体型のペンタブレットHD-640Aを発売。通常のペンタブレットは、タブレット上の筆跡はタブレットに接続された画面に表示されるが、液晶一体型の場合、画面に直接描画できるため、より直感的な制作が可能になる。ここに、液晶ペンタブレットと通常のペンタブレットという同社の主力商品がそろい、以降開発を重ねながら世界中のクリエーターを虜にしていく。
また、1994年には一般ユーザー向けのペンタブレットArt Padを発売している。パソコンが一般家庭で普及し、さらにインターネットが爆発的な広がりを見せ、プロのクリエーターだけでなく、趣味で絵を描く人々が自由に作品を制作・発信するようになってきたことが、同社が一般向け製品にも注力する転機となった。


トップクリエイターに鍛えられたテクノロジーが世界シェアNo.1を支える

ワコムのペンタブレットのもっとも特徴的な技術は、電子ペンに搭載された電磁共鳴 (Electro-Magnetic Resonance / EMR) 技術であろう。ペンタブレットでタッチ入力を可能にするために用いられている技術には、他にも「抵抗膜式」「静電容量式」「電磁式」「光学式」などがあるが、同社が採用している電磁共鳴式はこれらの技術に対して、反応性や堅牢性、タブレットのデザインや設計の自由度などでも優位性がある。この技術によって、同社製の電子ペンは電池も電源コードもなしで作動する。同社はこの技術で特許も取得している。

ワコムは、開発の初期から世界トップクラスのクリエーターの声をくみ取りながら、微細な筆圧の違いや筆のタッチの違い、色、またリアルな紙で書いているときの感触などを忠実に実現できるペンタブレットを追求し、開発を重ねてきた。
こうして培った技術は、2010年以降のペンタブレット市場の急激な拡大の中でも強烈な存在感を示した。同社では各モバイル機器メーカーに、自社技術をコンポーネントとしてOEM提供しており、スマートフォンやペンタブレット市場の拡大は、同社の業績を飛躍的に成長させたのだ。
現在、コンポーネント事業は、自社ブランド事業と合わせて同社の2本の柱である。

また、同社の戦略的な知財管理も市場での優位性の確立を促進している。
新しい技術に関しては積極的に特許を取得する一方、侵害された可能性がある際に立証が不可能であると判断したものはそもそも権利化せずにブラックボックス化している。また、日本国内だけでなく、製造国や販売国でも必ず特許を出願している。
創業時から一貫してペンタブレットに事業を集中させてきたことも、知財管理の効率化と適格化につながっている。


世界をよりクリエイティブに

コンピューターでのグラフィックス制作は、どんな人に対しても持っているクリエイティビティを最大限に引き出してくれる。初心者にとって、電子ペンは思わぬ表現を引き出し技量の上達を助けてくれるインストラクターとなり得る。日々の仕事として視覚表現を追求している人にとっては、多種多様な画材や製図用品がなくてもペン一本で多様な表現に挑戦できる、頼れる相棒である。
ペンタブレットのもたらすクリエイティビティは視覚芸術の範囲にとどまらない。ちょっとしたアイディアも、思いつくままに手書きで記すことで、自由な広がりを見せる。それをリアルタイムで世界中の人とシェアすることで、可能性はさらに広がる。ワコムが新たに提唱している「WILL(Wacom Ink Layer Language)」のコンセプトは、そういった世界の様々なクリエイティビティをつなごうという、壮大な取り組みである。
WILLは入力用ハードウェア、筆記や作画のためのアプリケーション、デバイスのOSなどの垣根を越えて、デジタル上のインク「デジタル・インク」をシェアするためのフレームワークである。このデジタル・インクは、書いている内容をリアルタイムで送信できるため、オンライン会議や共同制作などで、議事録、アイディアのスケッチ、グラフィック作品等を共有し、離れた場所から一緒に編集することが可能となる。また、デジタル・インクは、描いた順番、筆圧、一度書いたけれど消してしまったもの、書いた時間や場所など、様々な情報が埋め込まれる。したがって、保存された絵や文字に、誰がどのように書いたか、さらに書いているその人の思考の動きも垣間見ることができる。
世界の様々な機器やソフトウェアをつなぐためには、WILLの世界標準化が必須である。あらゆるメーカー、ソフトウェア開発者、サービスプロバイダーなどがWILLを容易に実装できるようソフト開発キット「WILL SDK(Software Development Kit)」を提供し、情報技術も公開している。WILLを実装したアプリの募集イベント「Inkathon(Ink+Hackathonの造語)」を開催したり、ISOやW3Cといった標準化団体、OSメーカーとも話を進めたりしながら、着実に歩を進めている。



ライター:Hiromi Jitsukata
2016.9.9 執筆
http://www.wacom.com/ja-jp
(株式会社ワコム)