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東北大学・鉄系超弾性形状記憶合金


概要

形状記憶合金は、日本が最も得意とする材料分野の1つであり、近年、国内で数々の画期的な研究成果が上げられている。今回取り上げる鉄系超弾性形状記憶合金の研究開発例もまた、それら研究成果のうちの1つである。

形状記憶合金とは、変態点と呼ばれる一定の温度以下で変形しても、変態点以上に加熱すると、元の形状に回復する形状記憶効果を持つ金属の事である。
この時の変形範囲が鋼等から製造される一般的なバネに比べると遥かに広い事から、前記のような形状記憶合金の特質をあるいは超弾性とも呼ぶ。

形状記憶合金は、変形しても加熱により元の形に戻る金属だが、熱を加えなくとも変形させる力さえ無くせばたちまち元の形に戻る金属も存在する。この金属を超弾性合金と呼ぶ。

これら形状記憶合金及び超弾性合金の研究は1950年代頃から開始された。
近年、研究の甲斐あって一部、実用化まで進められているが、課題が多々指摘されている。 というのも、医学やアパレル等に応用されている形状記憶合金はほとんどがNi-Ti基合金(ニチノール)である。しかし、ニチノールは冷間加工性が低い、あるいは、素材製造コストが高い欠点がある。
あるいは、ニチノールの他にFe-Mn-Si基合金が実用化されつつあるが、これは、形状記憶効果は有るものの超弾性が見られず、応用範囲が限られていた。

今回紹介する新超合金の研究開発に携わった田中優樹博士は、従来からの鉄系形状記憶合金(Fe-Ni-Co-Ti合金)の組成上で、チタン元素をアルミニウム元素に置き換え、さらに数種類の元素を添加した。
加えてそこに適切な加工熱処理を施す事によって、室温で超弾性を示す、鉄系多結晶のバルク合金の製造に世界で初めて成功したのだ(2010年3月現在)。


この新超合金は以下の4つの点において非常に画期的である。
  1. ニチノールの約2倍に匹敵する巨大超弾性歪み(最大約13%)を示す。
  2. 優れた熱間・冷間加工性を持つため、板等への成形が容易になった。
  3. 800MPa以上の高い超弾性を有しているため、従来の形状記憶合金では適用できなかった高い強度が必要な新しい用途、例えば一般構造・精密機械・建築等に使える可能性が高くなった。もちろん、従来の形状記憶合金が用いられてきた医療・スポーツ、レジャー・眼鏡フレーム等の用途においても使用可能である。他に、これまで不可能だった新しい製品の創出も期待できそうだ。
  4. 強磁性を持つので、磁場駆動マイクロアクチュエータ・磁場駆動スイッチ・磁気センサー等、磁場によって動的に機能する材料やセンサー材料としても応用できる。

何よりもこの、まるでゴムのように伸縮する新超合金は、実用化が進めば、特に地震多発地域での建築材料として重宝されるであろう。

今回、日本の東北関東大震災、続いて福島原子力発電所での大事故から多くの被害と犠牲が出たけれども、今後、このような素材が広く利用されて、建物の耐震性が強化され、地域住人の安全性が一層向上される事を期待する。


(ライター:Eriko Kinashi) 2011.03.29 執筆

http://www.tohoku.ac.jp/japanese/
( 東北大学 )