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東レ・炭素繊維


概要

炭素繊維とは、文字通り炭素から成る繊維である。その比重は鉄の4分の1であるにもかかわらず、比強度は鉄の10倍程度もある。この特性から、従来の金属材料と置き換える軽量化材料として、大変注目されている。

この炭素繊維の実用化は、1961年、我が国の通産省工業技術院大阪工業技術試験所の進藤昭男博士がアクリル繊維を使った炭素繊維の基本原理を発見したことに始まる。その後1971年、日本の企業が世界ではじめて大量生産を開始したのである。
東レは現在PAN系炭素繊維を製造しており、性能・品位・生産量において、世界シェア・ナンバー1の企業として、世界の炭素繊維産業をリードしている。

炭素繊維の必要性
人口の急激な増加や工業化に伴う地球温暖化、エネルギー供給源として主流となっている原油価格の高騰、科学技術の進歩に伴い高機能素材へのニーズ。こういった地球規模の問題を解決すべく、今正に対応が急がれている。そしてこれらを解決する方策を考える上でこの強くて軽い炭素繊維が大変注目されているのである。

現在この炭素繊維の市場規模は、1,500億円~2,000億円とみられるが、さらに普及が見込まれ、5年後には5,000億円規模に、さらに10年後には2兆円規模に拡大すると予想される。具体的にどのようなところで、炭素繊維の活用がなされているか見ていくことにする。

(1) 自動車関連
まず、レーシングカーで活用が始まり、単に軽量化できるだけでなく、高強度・高剛性により安全性について実証された。その後高級車に普及し、現在下記のような個所に炭素繊維が使用されており、炭素繊維の自動車用途への展開は急速に進んでいる。
ボンネットフード、スポイラー、プロペラシャフト、ラジエーターコアサポート、F1マシン各部品、ボディパネル等に利用されている。

(2) 船舶
従来より使用されているガラス繊維複合材料GFRPに比べ、炭素繊維複合材料CFRPを使用すると約30%の軽量化が達成されるという。この軽量化により、スピード向上あるいは燃費向上が図れる。
そればかりではなく、CFRPは振動減衰性能が優れている。エンジンおよび補機(ポンプ等)の台座にCFRPを用いることにより船体の固有振動数(共振点)を上昇させ、エンジン及び補機の稼働による船体振動を小さくするが可能となる。
またさらに、CFRPの優れた導電性を持つ。たとえば無線室壁面を炭素繊維複合材料で囲うことで、40dB以上の遮蔽性を得ることができる。

(3) 社会基盤
軽くて強い炭素繊維にはさらに土木建築用途として優れた性能を持っている。たとえば炭素繊維織物を現場で樹脂に含浸させて硬化させることにより施工ができる。金属板を貼り付ける場合に必要な重機が不要となるのである。また錆びない特長があり、海岸など錆びやすい環境でも金属に比べ劣化が小さいというメリットがある。
このことから社会基盤の補修・補強用途に最適な材料だといえる。

(4) 宇宙産業
人工衛星、ロケット、スペースシャトル・・・これらを打ち上げるためには、莫大なエネルギーが必要なのは言うまでもない。さらに大気圏とは違い、強い宇宙線、紫外線、極端な温度変化等にも耐える素材を選ばなければならない。
この点、炭素繊維は、高度・軽さに優れており、エネルギー省力化の面で優れているのはもちろん、熱膨張係数が金属の約1/10と小さいことから温度変化による寸法安定性に極めて優れている。今後、通信衛星等の打ち上げが年々増加する予定であり、PAN系炭素繊維の重要な用途として、拡大が期待される。

(5) 航空宇宙用途
機体を軽くして、より高性能な航空機の開発のために炭素繊維複合材料が利用されているが、加えて組み立て作業工数の削減などの副次的効果も実現している。
航空機では、垂直尾翼、テール・コーン、胴体尾部、水平尾翼、圧力隔壁、エンジン・カウル、フラップ・トラック・パネル、中央翼、主翼前縁、外側フラップ、主翼リブ等で炭素繊維強化プラスチックが使用されている。
エンジンの高温部などには依然技術的課題があり使われていないが、エンジンのファンコンテインメントケース、ブレイドなどには使われており、エンジン部位も含めた炭素繊維の活用が、燃費およびCO2排出量が今後益々重要となる状況下で、さらに飛躍的に進むものと考えられる。

(6) 風力発電
限られた天然資源の高騰化や近い将来生じうる枯渇化に備え、エネルギーの多様化が叫ばれている。たとえば、風力発電による電力供給がある。この風力発電ブレードの素材には、従来ガラス繊維複合材料が使われてきた。しかし風力発電の効率向上および限られた土地での大規模発電には、ブレードの大型化が必須であり、ガラス繊維複合材料の強度と重量では、この大型化は難しかった。すなわちブレードを大型化すると、ブレードの回転時および風力によるたわみにより、ブレードが支柱に当たり破損する危険性が高まるのである。そこで、ガラス繊維複合材料にかわり、この剛性の高い炭素繊維複合材料の使用が必須とまり、現在多くの風力発電ブレードの素材に使用されている。

(7) 機械部品、医療機器、IT
高い医療技術を実現するための素材としてもこの炭素繊維が使用されている。炭素繊維には軽い・強いという特徴に加え、X線透過率が非常に高いという特徴がある。この特徴を活かして、医療用天版にも利用されている。

日本の炭素繊維メーカーと製品

東レ:
東レグループは世界生産の4割を占める。同社は40年前に炭素繊維を本格事業化し、今では炭素繊維複合材料事業を戦略的拡大事業ととらえ、グリーン・イノベーション・ビジネスの中核素材として、ワールドワイドに垂直統合型ビジネスを展開。
製品としては、糸、クロス、ペレットといったように、原糸から加工品にまで及んでいる。


(ライター:Kaori Shimada)
2011.05.16 執筆
http://www.toray.co.jp/
( 東レ株式会社 )