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ニコン・ArF液浸スキャナーNSR-S620D


概要

ニコンの沿革
株式会社ニコンは、大手光学機械器具メーカーである。カメラ・天体望遠鏡・双眼鏡・半導体製造装置に関する事業を主力としている。1917年設立当初は、双眼鏡等の製造をメインに行っていた。1930年代頃からカメラの製造、1940年代頃から露光装置等の精密事業を開始し、事業の多角化を図る。

2008年時点の同社の事業内訳を見ると、カメラ等の映像事業が約60%を占めている。この事業に関しては、特に同社の一眼レフカメラ製品が世界から絶賛を得ている。他、半導体製造装置等の精密事業が約30%、光学測定器・顕微鏡などに関する事業が約6%の内訳となっている。

今回は、主要な半導体メーカーから厚い信頼を寄せられている、同社の半導体露光装置を紹介する。


半導体製造
一般的に半導体は構成回路が微細である方が、高速動作・省電力性・低発熱性などの側面において有利であるとされている。とすれば、半導体製造の基礎となるウェハーに転写される回路もまた、微細である必要がある。

スキャナーとは、ウェハーに回路を縮小して転写する機能を持つ縮小投影型露光装置(ステッパー)の中でも、焼き付けたい回路を書き込んだレクチルとウェハーとを同時に動かして露光する装置の事を指す。レンズの性能が高い中心部分を使用して露光できるため、スキャナーはウェハーの微細化に向いているが、その分複雑な機械構造が必要になってくる事から、装置の価格も高額になりがちである。

また、近年は更なる微細化に対応するため、レンズとウェハーとの間の空間を液体で満たす液浸と呼ばれる手法が採用されつつある。液浸を採用したスキャナーはダブルパターニングを行なうことにより20nmクラスの微細化にも対応可能である。

半導体ひいてはウェハー製造において時代は更なる微細化へ向かっており、世界的に液浸スキャナーの需要が高まっている。


ArF液浸スキャナーNSR-S620D
同社はステッパー製造業界において、世界的に大きなシェアを占めるトップ企業である。そんな同社の最新製品が、今回紹介するArF液浸スキャナーNSR-S620Dである。

ArF液浸スキャナーNSR-S620D

同製品では、これまでに同社が製造・販売してきたArF液浸スキャナーシリーズの大きな特徴である「タンデムステージ」と「ローカルフィルノズル」に加えて、新たに3つの新技術を搭載した。
また、世界に類を見ない新型プラットホームStreamlign Platformの採用により、32nmプロセス量産及び、22nmプロセスへの拡張に最適な装置性能を実現した。

独自技術「タンデムステージ」と「ローカルフィルノズル」
“精密機械に水を使用する”液浸の手法は、お互いに相容れない存在であることから、実現が難しいとされてきた。問題を解決したのが、同社独自技術である「タンデムステージ」と「ローカルフィルノズル」である。

「タンデムステージ」は、露光ステージとキャリブレーションステージの2つに機能を分担することにより、ウェハー交換中も純粋の供給を止める事が無く、温度も安定しタイムロスが少ない利点を持つ。

「ローカルフィルノズル」は、液浸による欠陥の原因となる気泡やウオーターマーク、そしてウェハー裏面の汚れ(コンタミネーション)もほぼ完全に防ぐことに成功。気化熱による温度低下でウェハー収縮を生ずることがないため、アライメント精度においても最大の優位性を発揮できるようになった。
この2つの独自技術により、同社は世界に先駆けてステッパーに液浸の手法を取り入れる事に成功した。


新たに搭載された3つの新技術
同製品では新たに、1)Bird Eye Control 2)Stream Alignment 3)Modular2 Structureの3つの新技術が搭載された。各技術について下記に説明する。

  1. Bird Eye Control … 高精度エンコーダー及び従来の干渉計のハイブリッドシステムにより、最適なステージパフォーマンスを実現した。また、フォーカス制御の改善に加え、その他の精度や安定性を改善した。これらにより、重ね合わせ精度2nmを目標とした機能性能を実現した。
  2. Stream Alignment … 大幅に拡大されたビームスパンを持つ“ストレートラインオートフォーカス”を搭載、これによりウェハー表面上を一気にマッピングし、Focus制御精度を改善した。また、FIAの5眼化により、生産性を確保しつつアライメント計測点数を増やす事が可能となった。他、ウェハーオーバーヘッド時間の大幅な改善を成し遂げた。これらによりスループット毎時200枚を目標とした機能性能を実現した。
  3. Modular2 Structure … 装置据付期間20日間を目標とした構造を実現した。またモジュール設計によるメンテナンス性の簡易化、それに加えてより細かい部品の交換も可能となったために、大幅にメンテナンス性と稼働率が向上した。拡張性の高いプラットフォーム設計により、世代間に渡った装置利用が可能となった。

このように同製品は、現代の先端技術を集積した液浸スキャナーの革新的製品である。


ニコンの将来
同社は半導体露光装置製造業界においては、液浸の手法をいち早く取り入れ、以後、最先端をひた走る。2011年現在の同社の世界シェアは20%と非常に高い。今回紹介した製品に留まらず、更なる微細化に対応した製品を開発し続けるであろう。日本国内はもちろん、北米、欧州、アジアなどの国外に販売・サービスの拠点を置き、世界各地の主な半導体メーカーと緊密なパートナーシップを築いており、更なる発展が期待される。

成長する気概の高い同社は、他事業部門においても、これからも発展著しいであろう。


ライター:Eriko Kinashi
2011.09.16 執筆
http://www.nikon.co.jp/
( 株式会社ニコン )