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クラレ・ポバールフィルム


概要

クラレは1926年に当時の先端技術であったレーヨンの国産化を目指して創立された企業である。創立者の大原孫三郎は、企業の業績向上のみならず創立の地、倉敷の経済に貢献した人物である。孫三郎は社会事業にも尽力し、現在に続く大原美術館をはじめ、病院、学校、奨学金事業などを設立した。先見の明を持った彼の志は受け継がれ、戦後は日本発の合成繊維であるビニロンを、世界で最初に工業化することにも成功、クラレは世界の合成繊維の草創期を切り拓いた。多くの創立から続く社会事業により幅広く人類へ貢献してきた会社でもある。この記事では、クラレが世界に誇る主力製品の一つである、ポバールフィルムについて紹介する。

電卓、デジタル腕時計、携帯用ゲーム機からパソコンや液晶テレビ、カーナビディスプレイなど、電子機器のデジタル情報表示には欠かせない液晶パネル。その液晶パネルの構成部品の一つに偏光板というものがあり、これは偏光フィルムという材料を重ねて作られる。この偏光フィルム自体が何種類かのフィルムを重ねて作るのだが、その一部の材料に最も適しているのがポバール、またはポリビニルアルコールという樹脂であり、ポバールから作った「ポバールフィルム」が、いまや世界中のあらゆる液晶パネルに必要不可欠な存在となっているのである。

クラレは、世界中の液晶パネルに必須の「ポバールフィルム」の、実に85%を製造している。クラレのポバールフィルムがなければ、世界を駆け巡るあらゆる情報も、画面を通して私たちの目に入ることはないだろう。「ポバールフィルム」は世界が必要とする、日本の技術の結晶である。


クラレとポバールフィルム

ポバールフィルムが使われる液晶パネルは、液晶という物質をさまざまな種類の板やスクリーンで挟むことで構成されている。ポバールフィルムを重ねて作られた偏光板は、光の波を遮断したり通したりしている。偏光板が挟んでいる液晶は、電圧がかかればまっすぐに光を通し、電圧がかかっていない状態では光の角度を曲げて通す。偏光板は、このように液晶を通過してきた2種類の光の波のうち、曲がってきた光を通すため、液晶によって曲げられた光とまっすぐ通された光との間で明暗の差を出して表示させている。

偏光板にポバールが使われている理由は3つ、フィルム状にした時の透明度が高い、延伸させても分子のゆがみがなくフィルムの役割を正確に果たすことができる、偏光機能を起こさせるヨウ素を吸着しやすい、という点である。そのため、製造されたポバールフィルムはこれらの特徴が最大限発揮できるものでなければならない。偏光板はフィルムを最大10層まで積層した、厚さ0.12~0.4mm程度の薄いものであり、ポバールをゆがみや凸凹なく延伸させ、正確に積み重ねる技術は大変高度なものであることは想像にたやすいだろう。そしてその技術を常に進化させながら世界中で使われるポバールフィルムの生産を、クラレが担ってきたのである。

1950年、クラレが世界で初めてポバールの工業化および商業生産を開始してから、まもなくアメリカや欧州への技術輸出、中国への製造プラント輸出などを重ね、国際競争を勝ち抜いて世界のポバール製造をリードしてきた。世界でのポバール売上高は2001年で30%であったが、2008年には50%まで伸びている。すでに半世紀以上培ってきた製造ノウハウは、市場において他社の参入を許さないクラレの強みであり、特に、ポバールから作られる「ポバールフィルム」の寡占状態は今後も続くことは間違いない。


世界を席巻する日本の部材メーカー

クラレのように、ある工業製品部品の材料を製造する部材メーカーは、今後さらに世界的な競争の中でその圧倒的な地位を高めていくと思われる。他社が簡単にはまねできない高度な技術、それゆえに必要な巨額の設備投資は、新規メーカーにとって高い障壁となる。また、その部材を採用している機械や機材のメーカーでは、代替品を使うとなれば製造ラインを新たに見直すなど複雑な手続きが要求される。そのため、一度信頼を得た一流の部材をわざわざ他のものに乗り換えよう、という動きは起こりにくい。こういった背景があり、長い間世界中で信頼を得てきた日本の部材は資本も技術も集約された製品である。部材製造の分野においては日本の技術力・生産能力は群を抜いており、世界での地位は、完成製品を製造するメーカーの下請け的存在ではなく、同等のものへと高まりつつある。目覚ましい成長を見せる先進国・新興国などのアジアの企業も、日本の部材メーカーなしには商品を製造することは難しいであろう。

世界で高い競争力を持つことはクラレのモットーである。デジタル情報のディスプレイが多様化し世界中で市場が拡大していく中で、世界随一の「ポバールフィルム」は今後も世界を席巻し続けるであろう。さらに他の製品も世界では重要な役割を果たしており、クラレは今後も世界の市場において躍進するはずだ。



ライター:Hiromi Jitsukata
2011.11.15 執筆
http://www.kuraray.co.jp/
( 株式会社クラレ )