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日本の金型産業


概要

 日常で私たちが使うほとんどの製品は、工場で大量生産されている製品である。
 同じ製品を大量に生産するということは同じ形をたくさん作るための型が必要ということである。もし型の精度が落ちれば、何万個何十万個と生産される製品の機能や規格をそろえることはできず、不良品が市場にあふれることになってしまう。

 私たちが店頭で陳列されている、ある商品のどれを手にとってもすべてが同じ規格で同様に機能するというのは当たり前のようだが、このことを実現するために生産の現場ではとても高い要求がなされている。それは、ひとえに「金型」に期するものである。

現代社会を支える工業製品の要「金型」

 「金型」とは、一口でいえば製品の部品の成形をする型である。
 「金型」によって、材料が目的の機能を果たすための最も適切な形に成型され、また、その型を使って成型する限りはすべての材料が同じ形に加工される、すなわち大量に生産されるのである。こうしたことから、「金型」は製品作りの原点であり、金型の良し悪しがその製品や工場、さらに国の産業の良し悪しを決めるとまで言われる。
 多くの工業製品生産メーカーにとって、良質の金型を確保することが、自社製品の品質保持・向上に直結している。例えば、自動車一台の生産ラインで使われる金型は2000種から3000種である。航空機に至っては数10万程度とも言われている。金型の些細なずれによって一部品に小さな狂いが生じたとき、そのような小さな狂いが積み重なれば完成品全体で大きな不良が生じることになる。このように見れば、一つ一つの金型の精度が高いということが、製造業にとっていかに大事なことかわかるであろう。

 この「金型」づくりにおいて、日本は長年にわたり世界が称賛する、ずば抜けて高い技術水準を保ってきた。日本の産業が、加工組み立て型工業重視へ転換した90年代初頭には、全世界の金型生産額の約1/3を生産している。それは、当時の経済情勢によるものだけでなく、日本の金型生産技術の高さによってなされた実績である。

高精度の日本製金型

 日本の金型が高品質を誇る背景には、金型製造現場が長年培ってきた技術力と業界の風土がある。

 現在中国や韓国での金型産業の躍進は目を見張るものがあるが、彼らは日本やそのほかの金型製造先進国から、既に機械化され洗練された生産工程や機材を取り入れてそれらに従って生産を行っている。
 これに対し日本の金型生産現場は機械化される以前の手作業や半自動化で生産を行っていた下積みの時代があり、それゆえにどのような工程を経てどのようなものができるかということに熟知している。機械生産の工程に対しても不具合などを瞬時に見つけ修正を行って、最適な製品を生産することが出来るのである。日本の金型生産を支えているのは、このような熟練の金型職人だ。彼らの中には従業員数が30人に満たないような小さな町工場の職人も多いが、その手には世界中の製造業を支える技術力が集約されているのである。

 また、金型がこういった小さな下請け企業で生産されていることも、日本の金型産業の特徴である。すなわち、業界にとって顧客とは完成品を製造するメーカーであり、彼らのニーズに特化したより高度な製品を集約的に生産してきたのである。親会社との密なコミュニケーションが要求される中で、相手との信頼を何より大事にし、コストよりも品質を重視する姿勢も培ってきた。このような姿勢は、企業内で金型も内製する完成品メーカーにはない強みである。

 さらに、日本の金型業界の気風として、機械や工夫が大好きで生産している金型そのものに対する愛着に並みならぬものがあること、そのため常により良いものを作りたいという向上心にあふれていること、そういった背景から利益よりもやりがいを優先できること、があげられる。短期的に見ればコストがとても掛かるように見受けられる日本の金型産業だが、安定した技術供給力や顧客との強固な信頼関係が培われ、長期的に利益を生み出し続けることができる構造を持っている。

 このような土壌が、世界にまねできない高品質の金型を育ててきた。

 日本が高度経済成長期に突入し、製造業が飛躍的に成長した1970年代から現在に至るまで、日本の金型産業はそのノウハウを育て、洗練させ、蓄積してきた。一工程における技術だけでなく、データ、全工程、生産設備など、産業全体が一体化して成長してきたため、生産ラインにおいて不良品も非常に出にくい体制が完成されている。

 日本の金型産業の魅力は挙げればきりがない。三次元CADによる設計工程の中にさまざまな工夫を重ね、どのような金型でも失敗なく正確に切削加工できる。インフラが整っており、工作機械、放電加工機、切削工具、測定機、そのほかのツールなど、金型生産環境の充実ぶりは世界随一を誇る。正確かつスピーディーな加工・生産ができる。規制物質ではない代替材料を提案し顧客に対する信頼の維持・向上に努めている…

 急激な工業化、市場拡大が進むアジア各国の企業との競争は激化しているが、日本が得意とする精密部品の金型や自動車ボディーの金型、また世界で最も需要が高いと言われるプラスティック用金型では、いまだ日本が抜きんでている。

 国際競争の激化する中で、世界から重宝されてきた日本の金型は今後ますますその品質を向上させていくであろう。世界中のメーカーが日本製金型を求めて小さな極東の島国に足を運び続ける日は続くのである。


ライター:Hiromi Jitsukata
2011.11.17 執筆
金型の種類
金型は大まかに以下のタイプに分類されるが、日本の金型はどのような分野でも秀でた製造技術を持っている。
プラスチック用
プラスチック材料の成形・加工をする
プレス用
鋼盤、非鉄金属板をプレスして加工をする
自動車・家電・雑貨など多方面の部品製造
鍛造用
棒網材、非鉄金属をプレスして加工をする
自動車部品、建設機械部品などの製造
鋳造用
溶融させた各種金属を流し込み、プレスして加工する
工業部品、建設機械部品、農業機械部品などの製造
ダイカスト用
溶融させた各種金属を射出して成形・加工する
自動車、精密機械、家電部品などの製造
ガラス用
ガラス材料の成形をする
ボトル、びん、照明器具、食器などの製造
ゴム用
合成ゴムや天然ゴムの成型・加工をする
タイヤ、キーボード、靴などの製造
日本の主要金型企業
アピックヤマダ株式会社
株式会社アーク
ファインテック株式会社
株式会社放電精密加工研究所
株式会社菊池製作所
黒田精工株式会社
株式会社丸順
株式会社三井ハイテック
ムネカタグループ
株式会社ニチダイ
株式会社精工技研
株式会社鈴木
大豊工業株式会社
株式会社タカギセイコー
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