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日本の石炭液化技術


概要

2004年、日本のガソリンの店頭価格がいっせいに値上がりした。
背景には、世界の原油価格が一気に高騰したことがある。中東における紛争、テキサス州のハリケーン来襲などによる供給不安、中国など急激に工業化を推し進めた地域での需要の拡大が原因である。このような産油国の情勢や、迫りつつある石油の枯渇に備え今再び注目されているのが石炭だ。

ただし今注目されているのは「液化石炭」である。

石油の産出地域が中東に集中しているなど、分布に偏りがあるのに対し、石炭は世界に広く分布している。また、可採年数約30年とも約40年とも言われ、あるいはそれを概算することも難しい石油に比べ、現時点での見積りで石炭は130年以上先まで安定して供給できるとされている。石炭は今後人類のエネルギー問題解決には欠かせない存在といえるのだ。
一方で、石炭の石油に対するデメリットは、固形物であるということに尽きるであろう。輸送や精製において非効率であること、燃焼させたときの廃棄分のガス発生量が大きいことで、これらの課題に応える石炭の技術開発は強く望まれてきた。

ここで紹介する石炭液化技術とは、そのような世界の潮流にあって期待されている新たな技術の一つである。
日本はこの分野の着手に遅れたが、短期間のうちに目覚ましい成果を上げ、今や世界トップクラスの技術を誇っている。現在は、実用化の機をうかがい、産炭国など石炭の有効活用が必要とされる国家・地域へ進出しようとしている。

世界最先端の石炭液化技法・NEDOLプロセス

1973年、オイルショックを受けて日本では大型のパイロットプラント開発計画が進められる。すでにアメリカと当時の西ドイツでは石炭液化の技術が高度化しており、日本のプロジェクトはさらなる効率化と実用化を目標に掲げて始動した。
世界を視野にいれて日本が目指したのは、温和な条件下で、最高水準の液化油収率を達成することであった。

この計画の遂行のために新エネルギー総合開発機構(現 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機/NEDO)が先頭に立ち、まず「直接水添液化法」「溶剤抽出液化法」「ソルボリシス液化法」の三つの液化技術を開発、さらにそれらの利点を合わせてNEDOLプロセスとして統合した。

NEDOLプロセスは、最もポピュラーな石炭種である瀝青炭を液化する、わが国独自にして世界最先端ともいえる技術である。
稼働実績として、パイロットプラントの80日間・1920時間の長期連続運転を達成。445日間の累積運転日数で58wt%の液化油収率、また幅広い炭種の液化、高スラリー濃度等など、欧米の技術をはるかにしのぐ成果を上げた。この結果を受けてパッケージ化された日本石炭液化技術はこれまでの技術に大きく勝る効率と、低コストを強みとしており、また、本格的な実用化に対して速やかに対応できる状況にある。


液化石炭の可能性

液化石炭のメリットは、既に述べたように石油に比べて安定して供給できることであるが、加えて石油と同様に扱うことができるというメリットもある。具体的には、液化石炭は軽油あるいは中質油であるので、そのまま石油精製・石油製品の流通機構に乗せることができ、新たなインフラ構築を必要としないということがある。
また、利用段階にまで精製されたものは従来のガソリン自動車で利用することができる。電気自動車やメタノール自動車がエンジンなどを新たに開発しなければならないのとは対照的な利点である。
さらに、高温、高圧という過酷な条件下で、固体・液体・気体の三相を取り扱うというのは、これまでの化学工業ではほとんど扱われてはいない分野であり、石炭液化技術のみならず、様々な派生技術が期待されている。

2011年3月11日、日本を襲った未曾有の巨大地震は、被災地域の沿岸に設置されていた原子力発電所に大きな被害をもたらした。日本は今後急激な電力不足に陥ることが予想され、その対応策として液化石炭の利用は注目を浴びるであろう。
世界でも、人口増加、先進工業化の進行によって、新しいエネルギーへの需要は今後ますます急増していくのは間違いない。長期的に安定して低コストで供給でき、何より地球環境と人間社会にとって安全なエネルギーを確保することは、人類の急務である。
日本の石炭液化技術の実用化は、中国、インドネシア、インド等の産炭国においては今後大いに要求されることになるであろう。これらの国々へ日本の技術が導入されるよう積極的な展開が期待される。


ライター:Hiromi Jitsukata
2011.12.06 執筆
http://www.nedo.go.jp
(産業技術総合開発機)