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筑波大学最先端サイバニクス研究拠点(山海研究室)・CYBERDYNE株式会社:ロボットスーツHAL (Hybrid Assistive Limb)


概要

HALは、人間が装着することで、立ち上がる、座る、歩く、重い荷物を持ち上げる、階段を昇降するなどの動作を支援するロボット型スーツである。
レッグプレスで100kgが限界だった人が180kgまで持ち上げられるようになった、40kgの重さの荷物でもたった数kgを持ち上げる感覚で持ち続けられた、など人間の動作を楽にしてくれるのだ。HAL装着時でも5人がかりで支えてやっと歩けた人間が、HAL福祉用を装着しリハビリを続けた結果、筋力がついて何とか自分で足が運べる状態にまでなった例もある。医療用を使用した例では、一生車いすでの生活を覚悟していた患者が、4か月のリハビリでスムーズに歩けるようになり、やがてHALがなくても1キロ以上も歩けるようになった。なお、HAL自体の重さは24kgだが、この重さはHAL自体が支える構造になっているため装着者には全く負担にならない。

このロボットスーツを開発したのは、筑波大学の最先端サイバニクス研究拠点。プロジェクトの中心研究者である山海 嘉之が1992年から基礎研究を進め1997年、試作1号機が完成。5年後の2002年に発表された3号機からは実用化が視野に入れられ、2012年の段階では試作機5号機と、その技術をもとに生産されている福祉用が技術デモンストレーションや実際の現場に導入されるようになった。

2014年現在は山海が代表を務めるサイバーダイン(CYBERDYNE)株式会社がさらなる実用化に向けて開発、プロモーションを進めている。代理店によるレンタルもしくはリース方式で販売もされており、事業開始2年の2012年時点では、国内70施設200台稼働の実績を持つ。さらに、トレーニング用・フィットネス用など、バリエーションを拡大させながら稼働している。さらに、工場などでの重作業支援、災害現場でのレスキュー活動支援、またエンターテイメント分野などで幅広く利用されることを視野に入れ、後継機種や新機種が意欲的に開発・発表されている。

注目すべきは、医療用HALの国際的な事業展開である。2012年、同社は、医療用HALによる足の運動障害を治療する臨床試験をヨーロッパで開始した。
治験は、スウェーデンのカロリンスカ医科大学のダンドリュー病院、ドイツ最大の労災病院グループ、ベルクマンスハイル病院、ベルギーのルーヴァン・カトリック大学(ルーヴァン・ラ・ヌーヴ大学)などで行われた。同年8月には欧州最大の第三者認証機関から、規格であるCEマークの認証を受け、EU全域での流通・販売が可能となった。装着型ロボットの医療応用は世界初であり、国内での商業化が実現されれば、日本の医療機器産業にとっても魅力的な商品となるであろう。国内でも、欧米に後れを取らない体制を整え、開発から認証、そして販売まで迅速に進めていくことが望まれている。
2013年8月には、ドイツの公的労災保険機関であるBG RCIをパートナーとして、サイバーダイン・ケア・ロボティクス社(Cyberdyne Care Robotics GmbH)が設立された。同社では脊髄損傷や脳卒中を含む脳神経金疾患の患者に対する機能改善治療を行っている。一回当たりの診療報酬の全額に労災保険が適用される。また、ドイツ国内の複数のBG労災病院や民間病院、さらにオーストリアやスイスの研究機関等とも提携し、さらなる医療事業の拡大を目指している。今後、新会社は、医療用HALによる機能改善治療の国際拠点として発展していくであろう。


HALが人間を支援する仕組み

HALのコアとなる技術は、スーツ装着者の皮膚表面から生体電位信号を読み取る技術である。

人が筋肉を動かす時に、脳から運動ニューロンを介して筋肉に神経信号が伝わり、骨格筋が動作する。この時に流れている電気信号から、装着者のどのような筋肉が動こうとしているのかを感知し、筋肉の動きと一体的に関節を動かす、これがHALの基本的な仕組みである。

また、このような人間の動きの意図を読み取りながら動くシステム(「サイバニック随意制御システム」)だけではなく、ロボット側が人間の動作を円滑に行おうとするシステム(「サイバニック自立制御システム」)を搭載し、これら2つのシステムの組み合わせで、HALは人間の動きを円滑にアシストしている。

HALという名前の由来もここにあり、「2つの制御方法が融合した肢」、すなわち” Hybrid Assistive Limb”というわけだ。


サイバニクス-HALを可能にする学問

このHALは、一見工学分野の技術の集まりのように見えるが、生体電位信号などを活用して開発できたのは、サイバニクスという人間、機械、情報系を融合複合し、文系理系を問わずに総動員した新領域の発想があったからである。

Cybernetics+Mechatronics+Informaticsの言葉を組み合わせたサイバニクスは山海が提唱した新しい学問概念。
「人間の動きに適合するもの」を創り出すことを目指したとき、電気工学、電子工学、機械工学はもちろん、脳神経科学、生理学、生物、化学、医学、さらに行動心理学や、社会への流通を視野に入れた法律学などの社会科学、安全に関する分野などを融合させた学問や技術の結晶を想定する必要があった。

山海の提唱によってサイバニクスという学術体系のもとにさまざまな知識が融合した結果、膨大な人間の動きのデータを様々な角度から集め、分析することができた。そして、HALに搭載されている制御手法が実現したのだ。

サイバニクスの目指すところは、人間を知り、人間の役に立つ研究・技術を生み出すことである。今後も進むHALの研究・開発が人間社会にどれだけ貢献するか、目が離せない。


ライター:Hiromi Jitsukata
2014,03,26 加筆修正
2012,02,29 執筆
http://www.cyberdyne.jp/
(CYBERDYNE株式会社)
http://sanlab.kz.tsukuba.ac.jp/
(筑波大学 サイバニクスグループ:山海研究室)
HAL®-5
重量 全身一体型約23kg
下半身型約15kg
動力(電気) 充電用100V バッテリー駆動
稼働可能時間 約2時間40分
(バッテリー交換で連続使用可)
動作 立ち上がり・座り、歩行、階段昇降、パワースクワット、重量物保持・運搬など。
操作 装着者が操作もしくは
オペレーターが操作。
使用環境 屋内外日常生活環境