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大学 & 研究機関

国立天文台ハワイ観測所
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すばる望遠鏡
緯度
北緯 19度49分43秒
経度
西経155度28分50秒
※アメリカ合衆国ハワイ州 ハワイ島マウナ・ケア山
海抜
4,139m
観測波長
可視光・赤外線
観測開始年
1999年
架台
架台形式
経緯台式
望遠鏡本体
高さ
22.2m
最大幅
27.2m
重量
555t
主反射鏡
有効直径
8.2m
厚さ
20cm
重量
22.8t
素材
ULE(超低膨張ガラス)
平均表面研磨誤差
14nm
焦点距離
15m
焦点
主焦点F値
2.0(収差補正光学系を含む)=焦点距離16,400mm
カセグレン焦点F値
12.2=焦点距離100,000mm
ナスミス焦点F値
12.6(望遠鏡本体の左右に2つ)=焦点距離103,320mm
すばる望遠鏡を納める円筒形ドーム
望遠鏡連動円筒型エンクロージャ
高さ
43m
基本直径
40m
重量
2,000t
全体はアルミニウムパネルで覆われている。

国立天文台ハワイ観測所・すばる望遠鏡

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歴史・特色

夜空に輝く星々には、強力な光を放つものもあれば、肉眼ではほとんど見ることができなくてもかすかな光を放っているものもある。澄み渡る夜空を見上げ、降り注ぐような星々を自分の目で見るのは感動的な体験だが、宇宙のはるかかなたで起こっている私たちの肉眼では見ることができない天体ショーを、望遠鏡をのぞきこむことで目にできるのも心が震えるような経験である。
現在、世界中の最新の望遠鏡によって100億光年以上離れた場所の天体が観測されているが、その中でも世界トップクラスの観測距離を誇るのが、日本の国立天文台がハワイ・ハワイ島マウナケア山に設置している「すばる望遠鏡」である。


国立天文台ハワイ観測所は1997年に設置され、1999年からすばる望遠鏡が観測を開始した。また、標高の高いマウナケア山頂では困難な作業は同じハワイ島のヒロ山麓のある施設でも行われている。設立以来、ハワイ観測所は天文学上の画期的な発見を重ねてきた。それはひとえにすばる望遠鏡の性能によるところが大きい。


世界最大クラスの一枚鏡

望遠鏡の役割を果たす上で重要なことは、まず何より多くの光を集めることである。すばる望遠鏡の、光を集める鏡は有効口径8.2mであり、単一鏡としては世界最高レベルの大きさである。大きいだけでなく、表面の凹凸の誤差は12ナノメートル、人間の髪の毛の1/5000程度で、これは、鏡の大きさをハワイ島の広さに換算したとしても紙一枚程度の誤差しかないことと同じである。世界一の滑らかさともいわれる由縁だ。この大きくて滑らかな鏡が、はるかかなたから届く微弱な光も集めているのだ。

また、この鏡は8.2mという大きさに対し厚さがわずか20cm。鏡の歪みをおさえるために、アクチュエーターと呼ばれるロボットの指261本で鏡を支えている。さらにこのアクチュエーターはコンピューター制御され、望遠鏡の動きに合わせながら0.1秒に1回という頻度で鏡のゆがみを補正している。この制御によって、集めた光の焦点のブレは世界最高クラスの精度に調整されている。261本というアクチュエーターの多さは世界でも類を見ないすばるの特徴である。


マウナケア山頂のすばる望遠鏡は、ヒロ山麓施設および東京都三鷹市にある国立天文台本部と、専用ネットワークによって直接つながれている。日本にいる研究者は、この高速ネットワークを用いて、山頂施設にいるのとほぼ同じようにデータにアクセスし、観測を実行することが可能となっている。


マウナケア山の円筒形ドーム

すばる望遠鏡を覆う天文台のドームも風通しの良い新型ドームであり、空気の乱れとそれに伴う星像の乱れを抑えている。通常の天文台は半球形のドーム構造であるが、すばるの天文台は円筒形のドームを採用している。外部の乱流を持ち込まず、またドーム内部の熱を効果的に解放している。マウナケア山頂には様々な国の天文台が立ち並ぶが、すばる望遠鏡の円筒形ドームはこれらの天文台群の中でも目をひいている。

このドーム内では、望遠鏡によって集めて映し出された光や星像がさらに解析されている。現在は7つの装置が稼働中であり、鏡によって集められた光は、4つの焦点それぞれで観測対象に応じた装置にとりこまれる。これらの装置によって可視光から赤外線領域までをカバーする観測が可能となっている。

以下は現在利用されている装置である。

ー多天体近赤外分光撮像装置 MOIRCS (Multi-Object Infrared Camera and Spectrograph):
 口径が 8~10 メートル級の大望遠鏡では世界初、近赤外波長域で一度に多数の天体の分光観測を可能にした装置。遠方銀河の研究に威力を発揮。

ー近赤外線分光撮像装置 IRCS (Infrared Camera and Spectrograph)

ー冷却中間赤外線分光撮像装置 COMICS (Cooled Mid Infrared Camera and Spectrometer):
 マウナケア山頂は空気が薄く非常に乾燥しているため、湿度の高いところではできない中間赤外線による観測が可能。 このCOMICS はマウナケアの優れた中間赤外線透過率を生かすための分光撮像装置である。

ー微光天体分光撮像装置 FOCAS (Faint Object Camera And Spectrograph):
 可視光で高い感度の観測を行う基本装置

ー主焦点カメラ Suprime-Cam (Subaru Prime Focus Camera):
 4096×2048 画素という大きな CCD を 10 個も並べた、 8000 万画素のデジタルカメラで、満月とほぼ同じ大きさの 34 分角× 27 分角という広い視野を一度に撮像できる。広い天域を能率よく観測する際に威力を発揮。

ー高分散分光器 HDS (High Dispersion Spectrograph):
 可視光で 10 万分の 1 の波長差を識別できる。

ー188 素子波面補償光学装置 AO (Adaptive Optics)

観測装置は現在も国立天文台や各大学にて開発研究が進められている。今後も、解像度の高い天体の画像を得るとともに、遠方にあるわずかな光を放つ銀河や星雲などの観測性能を大幅に向上させることが期待されている。


すばる望遠鏡への期待

現在の天文学の成果では、宇宙の果てはもちろん、近い所では太陽系ですらわかっていないことが膨大にある。すばる望遠鏡は、太陽系内でもこれまで見えなかった弱い光の天体から、約128億光年かなたの銀河までを続々と発見を重ねている。
宇宙の大規模構造のもととなるフィラメント状星雲の発見、銀河系の10倍以上の質量をもつ銀河団のもととなる星雲の発見、さらに特筆すべきは2006年の、当時天体観測史上最遠となる、128億8000万光年離れた銀河の発見…

星の誕生する様子、惑星の歴史、銀河の誕生から、宇宙の成り立ちまで、その解明においてすばる望遠鏡はこれからも多大な貢献をするだろう。
すばる望遠鏡は日本の国立天文台の施設だが、国際共同利用観測所であり、世界中の天文学者から観測提案を受け入れている。審査に合格した提案が実行に受け入れられる。国際的に進められているプロジェクト「次世代超大型天体望遠鏡」開発においても、日本が主導権を握って2020年のファーストライトを目指している。世界の天文学において、日本の果たす役割は今後さらに大きなものとなっていくであろう。

日本の大型望遠鏡が映す宇宙の姿によって、私たちは自分が宇宙の一員であることを実感するのである。

ライター:Hiromi Jitsukata
2012,1,16 執筆