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大学 & 研究機関

職員数 (2010年度)
常勤職員 82名
プロジェクト研究員、特任研究員、技術補助員等 159名
客員研究員、協力研究員、大学院生等 194名
予算(2013年度)
約88億円

国立研究開発法人
医薬基盤・健康・栄養研究所

Web link

歴史・特色

公式サイト http://www.nibiohn.go.jp/

医薬基盤・健康・栄養研究所は、2015年4月、国立医薬基盤研究所と国立健康・栄養研究所を統合して設立されました。

医薬基盤研究所では、医薬品・医療機器の開発に特化した産官学連携型の研究所として、2005年から、「学」から「産」への「橋渡し」を推進し、最先端の研究成果の迅速な実用化を行ってきました。同研究所は、大学などが行っている基礎研究を、実際の開発現場へ「橋渡し」し、「研究」「資源分譲」「資金提供」まで一貫して行うことができる我が国随一の研究機関として発展していきました。

また、国立健康・栄養研究所は、1914年に佐伯 矩(さいき ただす)によって設立された、世界初の栄養学研究機関である「営養研究所」を前身とし、長らく国民の健康保持、健康増進、栄養状態、食生活などの調査・研究を行ってきました。そして、日本における公衆衛生の向上や増進を目指してきました。

これら2つの研究所が統合したことで、「医薬品に関する専門性」と「食品・栄養等に関する専門性」とを融合した、医療現場から国民の日々の生活までをカバーする、新しい研究課題に取り組んでいくこととなりました。


医薬基盤研究所

近年、単一の企業やプロジェクトの中で医薬品開発を完結することは難しくなっています。病気の発症プロセスや原因の複雑な仕組みが解明されつつある一方、さらなる疑問が次々に生じているためであり、病気そのものに対する基礎的な研究を基盤とした包括的な取り組みが必要となります。新薬創製はこれまで以上にあらゆる科学分野の先端技術を集約して行われるようになっているのです。
したがって、企業の製品開発を推し進め産業を活性化させる基盤として、大学の基礎研究は必要不可欠です。一方で、大学に蓄積された多様な科学知識を開発・実用化すれば、大きな価値が生み出される可能性があることに、多くの企業が気付き始めました。各研究機関や企業の枠を超えた、「産」と「学」さらに「官」の連携は、現在、製品・技術開発、そして産業創生の重要な基盤となっています。
このような時代の要請を受け、同研究所では、多数の大学・企業と連携して研究を行います。各大学や企業との共同研究を推進することで、従来、個別機関だけではスムーズに進展させることができなかった研究開発を支援しています。


「創る、つなぐ、かなえる」~多くの患者を救う治療法・治療薬の確立を目指して

同研究所では、具体的には、以下の三事業を行っています。
① 医薬品等の基盤的技術研究 (研究)
② 生物資源研究 (資源分譲)
③ 医薬品等の研究開発振興 (資金提供)

このような取り組みのもとで、同研究所は以下のような成果を上げてきました。
もちろん、これらは同研究所の取り組みの一部であり、世界を変えるような画期的な成果の萌芽は今この時も育まれています。


医薬品安全性予測のための毒性学的ゲノム(トキシコゲノミクス)研究

2002年度から2006年度の第1期と2007年度から2011年度の第2期の計10年にわたり、国立医薬品食品衛生研究所および製薬企業(15社)と共同で、遺伝子レベルでの毒性発現メカニズム解明や毒性予測を研究し、大規模かつ高品質のトキシコゲノミクス(毒性ゲノム学)データを蓄積してきました。そして、150の化合物に関して、ラット固体、ラットの肝細胞、そしてヒトの肝細胞に暴露した際、どのように遺伝子が働くのか、また、どのような毒性を呈するのか、膨大なデータを収集、約8億件の毒性と遺伝子発現情報のデータベースを構築しました。この規模は、トキシコゲノミクスデータベースとして世界最大規模を誇ります。
このデータベースにより、創薬研究において早期段階で化合物の毒性を評価、予測することが可能となります。研究開発期間の短縮、コストの削減につながるだけでなく、より安全性の高い医薬品開発を支援します。創薬分野における日本の国際競争力の強化にも貢献するでしょう。
2010年6月には、研究成果である「大規模トキシコゲノミクスデータベースを活用した新規安全性バイオマーカーの開発」が、内閣府の産学官連携功労者表彰において日本学術会議会長賞を受賞しました。
2011年より、これらのデータはOpenTG-GATEsという名称で公開されています。今後は、プロジェクトで得られた研究成果を広く社会に還元しながら、製薬企業やバイオベンチャー等の創薬研究支援を推進します。


次世代・感染症ワクチン・イノベーションプロジェクト

2008年、厚生労働省によって創設された先端医療開発特区(スーパー特区)での採択プロジェクトとして「次世代・感染症ワクチン・イノベーションプロジェクト」はスタートしました。
ワクチンは治療薬と違い、感染症をもたらす菌やウイルスの薬剤耐性が問題になりません。従って、世界規模での感染症流行が見られるようになった現在、予防の観点からその重要性はこれまでになく高まっています。
日本は、ワクチン開発分野においてリバースジェネティクス技術、自然免疫研究、水痘ワクチンの開発の例にみられるように、世界でも最高水準の基礎研究実績をもっています。このような日本の技術や開発力を特区に集結し、様々な技術を融合させた新しいワクチンの研究を行うとともに、ワクチン開発時のガイドラインを作成し、新規開発がより迅速に行える体制の構築を行います。
具体的には、次のような「次世代高付加価値型ワクチン」の実用化を目指します。
-あらゆる方に対応できる新型インフルエンザワクチンや、これまで特効薬がなかったマラリア、エイズのワクチン
-「飲む」「貼る」「噴射する」など、注射器を使わずに投与することができ、安全で簡単に使えるワクチン
-複数の感染症に効果を発揮する多価ワクチン
また、ワクチン産業の効率化および拡大、ワクチン研究者の育成も視野に入れ、日本発のワクチンが世界のワクチン開発と感染症制圧に貢献することを最終目標に据えています。


薬用植物(甘草)の人工水耕栽培システムの開発

甘草は、薬用植物の一つであり、漢方製剤において処方の70%以上に使われる最も汎用度の高い漢方薬原料です。食品添加物や化粧品の原料などにも広く使われ、需要の高い植物ですが、わが国では、使用量の100%を海外からの輸入に依存しており第2のレアアースとも呼ばれています。
医薬基盤研究所では、保有していた遺伝資源から優良苗を選抜し、鹿島建設および千葉大学と共同で世界初の甘草の人口量産システムを開発しました。高品質の甘草が安定的かつ継続的に国内から供給できる道を切り拓いただけでなく、他の薬用植物についても人工栽培研究の推進が期待されることとなりました。
同研究は、2011年度の内閣府の産学官連携功労者表彰において厚生労働大臣賞を受賞しています。


ヒトiPS細胞を用いた新規in vitro 毒性評価系の構築

このプロジェクトは、2008年、厚生労働省によって創設された先端医療開発特区(スーパー特区)に採択されたプロジェクトです。
医薬品開発を成功させるために特に重要なのが毒性試験です。医薬品開発が中止される原因の20%は毒性の判明にあり、開発の早期段階で毒性が判明することは、医薬品開発の高効率化、コスト削減、期間短縮につながるのです。プロジェクトでは、iPS細胞を活用したin vitroの医薬品毒性評価系を新たに構築すること、薬事法に反映させるための毒性試験ガイドライン案を作成することの2点を趣旨として研究を進めています。
ヒトiPS細胞は、受精卵やES細胞を全く使用せずに培養することが可能で、あらゆる細胞に分化できることから、薬剤の効果や毒性を評価するには非常に有効なツールとして期待されています。実用化が進めば、従来の医薬品開発が革新されるでしょう。プロジェクトでは、利用可能なiPS細胞由来細胞の確立を目指し、多種多様なヒト細胞・組織の作製、iPS細胞の高効率分化誘導技術の開発、細胞管理技術や評価法の確立と標準化を行います。同事業は、創薬応用フィールドにおけるヒトiPS細胞の唯一のプロジェクトであり、世界に先駆けたiPS細胞の応用技術によって創薬分野をリードしてくことが期待されています。

2011年には、大阪大学と株式会社リプロセルとの共同研究による、世界初のヒトiPS細胞由来の肝臓細胞が開発され、2012年から市販されることになりました。肝細胞は医薬品開発時の毒性試験において最も重要な毒性評価です。従来の毒性試験は、ヒト初代培養肝細胞を利用しますが、ヒトiPS細胞由来の肝細胞樹立によって、必要な肝細胞を安定して供給できる途が拓けたのです。今後、製薬企業などの毒性評価試験や薬物動態試験にて有効活用されることが期待されます。
「ヒトiPS細胞から分化誘導した肝臓細胞の製品化」は、2012年、産学官連携功労者表彰において厚生労働大臣賞を受賞しました。


ライター:Hiromi Jitsukata
2013.5.10 執筆

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